第109話 遺していくもの
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に時間を取られて、業務の絶対量は去年の七割から八割というところ。
残りの三割について、エベンスやベイに割り振れる案件については任せることにした。特に軍本体に対する案件についてはエベンスに、国防委員会内部についてはベイに割り振り、彼らは本気で迷惑そうな顔をしつつも仕事はやり遂げた。性格や性根に問題があるとはいえ、優秀な人材であることに違いはないことを証明した形になった。
それでも国防委員会ビルの職員用シャワー室と、オフィスのあるフロアの共用廊下で意識を失っているところを発見され診察室に運ばれたこともあり、意識を回復した後で同い年ぐらいの当直医と『仕事と健康』について激論を交わすことになった。
「チェン秘書官についてだけどね」
昨年同様、評議会議員総会の二日前の夜。俺はレイバーン議員会館五四〇九号室に呼び出され、議員オフィスの応接室に設けられたディナー(四人前)を前にして、とても世間にお見せすることができない不愉快そうな顔つきで、鶏チャーシューを口に運びながら、席に着くなり怪物は俺に零した。
「どうやらフェザーンで行方をくらましたことが分かったよ。中央情報局二課と七課の連中が、わざわざここまで来てご丁寧に説明してくれた」
治安警察公安部出身のトリューニヒトとしては、中央情報局は昔の商売敵である上に、国防委員会の中にスパイが居たことを『丁寧に』説明されたことが気に入らないのは分かる。そんなことは百も承知で使っていたんだと言うわけにもいかず、いつものようなキラキラした笑顔でしらばっくれていたのだろう。国防委員会内部の綱紀と防諜についても何か言われたのかもしれない。
「君の管理責任についても聴取する必要があると言ってきた。なかなか笑える話じゃないかね。前任者から引き継いだだけの秘書官が、帝国のスパイだなんてどうやって君が分かるという話だ」
「まったくです」
「秘書官が虚偽の申告をして持ち場を離れて、直接的に迷惑を被っていた君に対して疑念を持つなんて、実に無能なC(中央情報局)の連中の考えそうなことだ」
「先生のおっしゃる通りですが、チェンは一応私の部下だったことに変わりはありません。先生にはご迷惑をおかけいたしました。申し訳ございません」
「君が謝る必要はないよ。失礼なのは彼らだ。むしろ国家保安の為に、私としてはCの中身こそ洗浄した方が良いと思う」
登場人物全員が白々しい。俺はフェザーン自治領主のスパイと理解した上で、彼女をフェザーンに送り返した。中央情報局は最初から国防委員会内部を探るためにチェンを送り込んでいた。トリューニヒトは(恐らく承知の上で)そんなチェンを使って俺から『Bファイル』を探し出していた。さらにトリューニヒトはフェザーンの黒幕というべき地球教の手先とわかってて、悪霊を自分の秘書として
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