第109話 遺していくもの
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原作では七年半後には金髪の孺子に手玉に取られた形になったとはいえフェザーンを滅ぼした男であり、あの地球教を手玉に取り、死ぬまで陰謀を企て続けた男だ。独立商会を一つ潰すなどわけない。勿論氏も商会もドミニクも、真正面から敵対するような愚かな真似はしないだろう。だがそれであっても、ミリアムも含めてリスクを取ってくれるのだから感謝しかない。
「どうかよろしくお願いします。それと次回お会いするのは早くても八月以降となるでしょうが、恐らくその頃、私は前線勤務になっていると思われますので、こういう形でお会いできるのは二年ほど難しくなるかもしれません」
俺の言った最前線と二年という言葉に、流石に高官の孫娘であったミリアムは、すかさず眉を上げて反応する。
「あら。哨戒隊の指揮官か、国境哨戒をする星域管区司令部の参謀にでもなるのかしら? なにか今のお仕事で不始末でも?」
「ミリアム。君ね……」
右手をミリアムの左肩に、左手を額に当て、目を瞑りながら俯くラヴィッシュ氏の呆れ声に、俺は苦笑を隠せない。俺と二人で会う時は歳不相応に大人びた態度を取るミリアムも、ラヴィッシュ氏と一緒だと歳相応の若い女の子になってしまうらしい。ヤンと会っていた時もそんな感じだったはずだから、包容力というか器量の大きい相手の傍ではそうなるのかもしれない。
「赴任先はまだわかりません。ですが恐らく哨戒隊司令となるでしょう。そうなると四分の一になる可能性は否定できません。その時は新しい依頼も含めて今までのお約束通り、関係の処分をお願いします」
俺が死んだ後、ミリアム(とラヴィッシュ氏)に依頼しているドミニクとの連絡業務は、全てドミニクの指示に従って処理すること。全てなかったことにするのがドミニクにとって一番いいことだ。子供探しもそれでおしまいにすれば、地獄でチェン秘書官に怒られるのは俺だ。もっとも転生してこの世界に居る俺としては、地獄というのがあまり信じられなくなってきてはいるが。
「それは心配する必要はなさそうね」
俺の心情を察したのかどうかは分からないが、ミリアムは小さく鼻息をついた後で、呟くように言った。
「貴方、どうやら運だけはブルース=アッシュビーよりありそうだもの」
ミリアムのアッシュビー観を原作で知っている身としては、それがあまり肯定的な意味ではないと分かるだけに、何とも微妙な気分にならざるを得なかった。
◆
独立商船ランカスター号を見送った後、国防予算審議は忙しさを増し、去年同様、俺は官舎に戻る方が少ないような日々を送る状態になった。昨年とは違いチェン秘書官はいないので、各所のアポイント業務も全て自分で引き受けなければならない。仕事のやり方やポイントについては去年の経験が生きているので戸惑いは少ないが、交通整理
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