第三章
[8]前話
「その訳を」
「そのことですか」
「どうして逃げたのですか」
「この世に豊穣をもたらす仕事は多いです」
テリビヌは穏やかな顔と声で答えた。
「左様です。ですが」
「それでもですか」
「豊穣の神は私だけですね」
「確かに」
「その為仕事が多過ぎて」
「嫌になったのですね」
「はい」
そうだというのだ。
「まさに」
「そうだったのですか」
「ですから」
それでというのだ。
「ここまで逃げたのです、出来れば」
「貴方以外にもですね」
「豊穣の神の仕事を」
これをというのだ。
「受け持ってくれれば」
「わかりました、それでは」
ハンナハンナはテリビヌの言葉に頷いた、そうしてだった。
実際に神々に彼が逃げた訳と願いを話した、すると。
神々もだ、それならと頷いた。
「確かに豊穣の役割は多い」
「それもかなり」
「それならだ」
「豊穣の神を増やそう」
「そうしよう」
神々も頷いた、そうしてだった。
豊穣の神を増やしテリビヌ以外にもその仕事をしてもらった、するとテリビヌも不満に思わず逃げることもしなくなった。
そうして豊穣の神の一柱として働き続け世界は多くの豊穣の神によって実りがもたらされる様になった。メソポタミアの神に豊穣の神が多いのはこのことによるという。その中で大きな役割を果たした蜜蜂にだ。
シャマシュとハンナハンナは笑顔で話した。
「そなたがしたことは大きい」
「よって貴女にも実りをもたらす役を与えましょう」
「それはどんな役ですか?」
蜜蜂は二柱の神々に尋ねた。
「それで」
「花から蜜を採り甘いものを生み出すのだ」
「そして花と鼻を結びつかせ植物を増やすのです」
「そなたにその役を与えよう」
「そのうえでこの世に多くの花をもたらすのです」
「甘いものを生み出して花を増やす」
蜜蜂は神々の言葉に仰天して喜んで言った。
「それはまた素晴らしいですね」
「やってくれるか」
「このお仕事を」
「是非。そんな素晴らしいお仕事他にないですから」
それでとだ、蜜蜂は大喜びで言ってだった。
その二つの仕事に励む様になった、蜂蜜と花がこの世に満ちる様になったこともこの時からのことであるのだ。全ては神々の時代にはじまったことである。
蜜蜂の挑発 完
2024・3・13
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