第二章
[8]前話
サテトに感謝し農業をはじめた、そしてそこからだった。
エジプトは栄えた、子供はそれを見てわかった。
「そういうことなんだ」
「これでわかったな」
「うん、どうしてサテト様が豊穣の女神様か」
「あの方はナイル川の恵みを我等にもたらしてくれるのだ」
神官は子供に微笑んで話した。
「だからこそだよ」
「豊穣の女神様なんだ」
「そうなんだよ」
まさにというのだ。
「あの方は」
「そういうことだね」
「お子はおられなくても」
そうであるがというのだ。
「実に多くの恵みをもたらして」
「豊かにしてくれるからなんだ」
「豊かになれば」
世がとだ、神官は話した。
「多くの命が生まれるのだから」
「サテト様が恵みをもたらしてくれるから」
「だからあの方はお子がおられずとも」
そうであってもというのだ。
「それでもだよ」
「豊穣の女神様だね」
「多くの命を生み出して下さるな」
「わかったよ、僕もね」
微笑んでだった。
子供は頷いた、そうして以後彼もサテトを深く崇める様になった。そしてその頃サテトはというと。
夫にだ、共に食事を摂りつつ言った。
「あなたが私の夫でいてくれてよかったわ」
「どうしてなんだい?」
「子供を産めない私を妻にしてくれて」
微笑んで言うのだった。
「本当に嬉しいわ」
「子供がいなくてもいいじゃないか」
夫は妻に優しい声で話した。
「確かに欲しいにしても」
「それでもなの」
「それだけじゃないだろう」
こう言うのだった。
「夫婦。それに世の中は」
「そうなのね」
「多くの恵みがもたらされるなら」
それならというのだ。
「もうだよ」
「それでいいの」
「少なくとも君は多くの恵みをもたらしてくれて」
そうしてというのだ。
「私を助けてくれるのだから」
「いいのね」
「そうだよ」
声は優しいままだった。
「それで充分だよ」
「そうなのね」
「だから」
それでというのだ。
「これからもだよ」
「一緒にいていいのね」
「是非共」
微笑んで答えた。
「頼むよ」
「それではね」
「これからも」
夫婦で話した、そうしてだった。
サテトはそれからもエジプトにナイル川から豊穣の恵みをもたらしそこにいる者達に信仰された。そして豊穣の女神だと言われ続けたのだった。
豊穣の女神 完
2024・2・14
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