第一章
[2]次話
宝がわからない者達
丹後風土記に書かれている話である。
比治の里に真井という見事な泉がありそこに時折八人の見事な外見の天達が時折舞い降りてきてだった。
水浴びをしていた、このことは里の者なら誰もが知っていたが里で誰からも嫌われている米佐と雀澄の老夫婦が持ち前の欲を出して思いついた。
「八人のうちの一人でもいい」
「わし等の養子にしてだね」
「そうだ、何でもあの天女達は米の神の娘らしい」
老人は言った、細い小さな目でやや面長でいやらしい笑みがこびりついた実に癒しそうな顔だ。老婆は丸顔で小さな細い目で全体的に喜色悪い印象を周りに与えている。
「そして美味い酒を醸すらしい」
「酒だね」
「わし等は酒はあまり飲まんがな」
「酒は売れるよ」
老婆は言った。
「だからね」
「ああ、それでな」
「天女の一人をわし等の養子にして」
「酒を造らせてな」
そうしてというのだ。
「売るぞ」
「そうして儲けるんだね」
「たんまりとな、だから真井に行って」
そうしてというのだ。
「一人でもいいからな」
「捕まえてだね」
「養子にするんだ、ただな」
それでもというのだった。
「おいそれとはな」
「捕まえられないね」
「天女は空を飛ぶからな、だから空を飛ばせる服をだ」
「取るんだね」
「あの連中が水浴びをしている間にな」
その間にというのだ。
「そうするんだ」
「そしてだね」
「捕まえような」
「それじゃあね」
夫婦でそうした話をしてだった。
ずっと真井の泉で待ち構えていて天女達が舞い降りた時にだった。
二人は彼女達が水浴びをしている間に一人の服を取って隠した、すると七人は水浴びを終えると服を着て空に舞い上がって高天原に戻ったが。
一人の小柄で美しい娘が残った、老夫婦はその天女の方に来て言った。
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