第一章
[2]次話
葡萄が変わり
ペルシアに伝わる話である。
ペルシアの王シャムシードは葡萄が好きだった、それで毎年葡萄が採れる季節になると周りに命じていた。
「では壺にだ」
「収穫した葡萄を入れて」
「そうしてですね」
「保存しておき」
「そして長く食べますね」
「そうしますね」
「そうするのだ」
こう言うのだった。
「いいな」
「わかりました」
「その様にしましょう」
「例年通り」
「そうしましょう」
廷臣達も毎年のことなのでわかっていた、それでだった。
収穫した葡萄をそうした、そしてだった。
精悍な顔立ちで見事な髭を持つ王は葡萄を楽しんだ、だが。
その中でだ、王はその話を聞いて顔を顰めさせた。
「何っ、葡萄を収めた壺のうちの幾つかからか」
「はい、妙な匂いがしてです」
「泡立ってです」
「汁が出て液となり」
「腐ったと思われます」
「それはいかん」
王は廷臣達の話を聞いて述べた。
「非常にな」
「左様ですね」
「それではですね」
「その壺達の中の葡萄には手を付けない」
「そうしますか」
「毒になったな、腐って」
こう言うのだった。
「だからな」
「はい、それではですね」
「もうその壺の葡萄は捨てますね」
「そうしますね」
「頃合いを見てな」
こう言ってだった。
王はその壺の中の葡萄達を暫くそのままにさせた、そして機を見て実際に全て捨てるつもりであった。
だが王は悩みがあった、実は妃の一人が常に鬱々としていて暗い気持ちの中にあったのだ。
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