第三章
[8]前話
「こうしたものは全くです」
「氷や雪はないですね」
「はい、全く」
それこそというのだ。
「それに覆われた街は、ですから」
「そのないものをですね」
「動画や画像で」
「紹介しますか」
「そうします、お仕事をしながら」
学会のことと、というのだ。
「そうしつつです」
「さらにですね」
「紹介していきます」
「この街にいる間は」
「そうします」
フェレンツに笑顔で話してだった。
コルテスは実際に学会の仕事でサンクトベテルブルグにいる間ずっとこの街の景色を自分のスマートフォンで動画や画像を撮った。カメラなら幽霊も映るがスマートフォンでは聞かないので大丈夫共思ってだ。
それでその動画や画像を祖国の人達に紹介すると大人気だった、一千万近いキューバ人達がいいねのボタンを押した、だが。
「奇麗な氷と雪の街の中にですか」
「しっかりとです」
学会が終わってそれぞれの国に帰ってからだ、コルテスはフェレンツに国際電話で笑顔で話した。キューバなので当然今いる場所は暑い。
「映っていました、それも何枚も」
「そうだったのですね」
「動画にもです」
こちらにもというのだ。
「映っていたそうで」
「あの街ですからね」
「はい、氷と雪の中に」
「しっかりとですね」
「何度も映っていました」
「スマートフォンでもそうなりますか」
「そのことがわかりました」
笑顔で言うのだった。
「まことに」
「そうですか」
「まあ気のせいということで」
コルテスはフェレンツに笑顔でこうも言った。
「しています」
「共産主義だからですね」
「はい、そうしたものは」
「そうですか」
「そうです、ですが皆行きたいとはです」
人気が出てもというのだ。
「言わないですね」
「寒くて、ですね」
「そして、です」
そのうえでというのだ。
「気のせいと言っても」
「それでもですね」
「映っているので」
「そうですか、見ている分にはですね」
「奇麗ということで」
「そうですか、ではまた機会があれば」
「何処かの街でお会いしましょう、その時は宜しくです」
遠く離れた場所にいる友人に告げた、そうしてだった。
二人で医学の話もした、コルテスはその後で自分が撮ったサンクトペテルブルグの画像を一つ観た、氷と雪に覆われ銀色に透き通った街のその右端に小さな髑髏があったがそれは気のせいとしたのだった。
水の都 完
2024・4・15
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