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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#8
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───もう1頭のセレナに近い方の変異オーガは、セレナの異様さに一瞬気を取られたらしく、ヴァイスの魔法に撃たれてよろめき、魔術の中心から逸れてしまった。
左足に傷を負わせることはできたものの、命を奪うことまではできなかった。
(1頭は避けられてしまったけど、倒せた…!もう一度同じものを────)
再び魔術を発動しようとするセレナに気づいた変異オーガが、手に持つその棍棒をセレナ目掛けて放った。
力ある魔物に投げつけられた棍棒は、距離もそれほど離れていなかったこともあり、次の瞬間にはセレナの視界を塞ぐほどにまで迫っていた。
これは────もう、魔術も退避も間に合わない。
「ヴァルト…っ」
セレナの唇から零れ落ちたのは────この世で一番大事な人の名だった。
思わず閉じた瞼の裏に、見ているだけで胸が満たされる────その笑顔が思い浮かぶ。
「セレナ…!!」
その大事な人の声で、自分の名を呼ばれた気がした。続いて、何か重く硬いものがぶつかるような、鈍い音が響く。
恐る恐る瞼を開くと────大柄な背中が目に入った。セレナを庇うように佇むその人は、少しだけ顔をこちらに振り向かせる。
「お嬢、無事か?」
「ヴァルト…?」
それは────ここにいるはずのない、ヴァルトだった。
状況が呑み込めず、嬉しさよりも戸惑いが勝る。
ヴァルトは、ルガレドの命により、ここから離れた場所で戦っていたはずだ。それに、構えたままの両手剣が、いつもの愛剣ではない。
「お嬢、さっきの魔術────まだ撃てるか?」
また前を向き、そう問うヴァルトに、セレナは我に返る。
そうだ────戸惑っている場合ではない。変異種は、もう1頭残っているのだ。
「大丈夫…!」
セレナの勢い込んだ返答に、ヴァルトが小さく笑いを零した。
セレナの位置からではその表情は見えないが────きっと、あの陽だまりのような優しい笑みを浮かべているに違いない。
「ディンドの旦那は先に戻ってくれ。ここは────ワシらが引き受ける」
ヴァルトは、変異オーガが串刺しにされた変異オーガの落とした棍棒を拾い上げるのを睨みながら、同じくいつもと違う大剣を構えたディンドに告げる。
「頼んだ」
ディンドはそう応えると、側まで退いてきたヴァイスに目線を向ける。
「ヴァイス殿、引き続き、ここを頼む」
「任せてくれ」
ヴァイスが頷くのを確認したディンドは、自分の任務を果たすべく奔り出した。変異オーガは、セレナを標的に定めたようで、駆け抜けていくディンドには眼もくれない。
「ヴァイスの旦那───あいつはお嬢とワシがやる。アンタは護りに徹してくれ。お嬢とネロ
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