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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#8
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間、あの2頭の変異オーガをヴァイスだけで足止するのは難しい。

 それなら、別の魔術を使ってみる?────セレナの【魔術駆動核(マギ・エンジン)】には“氷姫”が手元にない、あるいは使えない場合を考えて───リゼラがピックアップしてくれた魔術式が幾つかインストールされている。

 何度か発動させたことがあるから、行使することはできる。

 でも────どれも“氷姫”の魔術と大差はなく、条件は同じだ。あの棍棒を押さえることも、変異オーガを出し抜くこともできそうにない。

「…っ」

 それ以上は何も思いつかず────セレナは、自分の無力さを痛感する。

 これまでは、“氷姫”を発動させて────ただ氷塊をぶつけていればよかった。弱い魔物なら群れですら壊滅させることができたし、傷つけることはできなくても牽制にはなった。

 だけど────それは、ヴァルトとハルドがいてくれたからこそだ。

 無防備になっても護ってもらえるから魔術を発動できて────致命傷を負わせることができなくても(とど)めを刺してもらえた。

 地下遺跡のときだって────そうだ。あのときはラムルがいてくれたから、あの男を無力化することができた。

(私一人では何もできない……)

 “落ち零れ”────(ぬぐ)いとれたはずの、セレナをずっと苛んできた言葉が不意に頭に浮かんだ。

 あの男の言う通り、やっぱり自分は“落ち零れ”なのではないか────そんな考えに囚われそうになって、セレナは、縋りつくように、初めての友人からもらった大事な短杖を握り締める。

「娘、何を呆けている!」

 ヴァイスの声にはっとして顔を上げたときには、変異オーガの1頭がすぐ目の前にいて、セレナに向かって棍棒を振り下ろしていた。

 恐怖を感じる間もなく、セレナはただ迫り来る棍棒を見つめる。

 視界を占めるほど棍棒が間近に迫ったそのとき────セレナは右側から衝突してきた何かによって吹き飛んだ。
 一瞬前までセレナが立っていた場所を黒い棍棒が抉って、土砂が舞う。

「う…」

 右脇腹と最初に着地した左肩に鈍い痛みを感じながらも、何とか身を起こすと───変異オーガが振り下ろした棍棒を避けるために跳ぶヴァイスが目に入った。

 セレナがいる方とは反対側に跳んだヴァイスに、もう1頭の変異オーガが間合いを詰め棍棒を振り下ろす。ヴァイスは、それも跳ねて回避する。

 ヴァイスを先に片付けることにしたのか、変異オーガは2頭とも、ヴァイスを追って棍棒を振り回す。

 間合いに入られてしまったヴァイスには魔法を放つ余裕がなく、敵が2頭であることと体格差もあって、防戦一方となった。

 ヴァイスが一方の棍棒を避けて跳び、着地したところを
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