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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#7
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≪時間がないので端的に言う。あの黒い棍棒は、【霊剣】で───ハルドとアーシャの剣ならば折られることはないそうだ≫

 レナスが、2頭の変異オーガから眼を逸らさずに、【念話(テレパス)】で告げる。

≪ハルド、アーシャ────まだ、やれるか?≫
≪やれます!≫
≪はい!≫

 ハルドもアーシャも疲労を感じているだろうに────それでも、二人の返事に澱みはない。

≪ディンド様とヴァルトは、一先ず邸へ≫

 ディンドは、まだ成人もしていない年少の二人を残して、矢面に立つべき大人である自分が、一時的とはいえ撤退することを不甲斐なく思いながらも────レナスの言葉に頷くしかなかった。

≪すまん。ここを───二人を頼む≫
≪お任せを≫

 【往還】を発動すべく、ディンドは痛む身体を駆使して腕時計に手を伸ばす。同じく不甲斐なさそうに表情を歪めたヴァルトも、【往還】を発動させる。

 ディンドとヴァルトの足元に展開した二つの魔術式から迸った眩い光が、瞬く間に視界を塗り潰して─────

「行くぞ────ハルド、アーシャ」
「「はい!」」

 レナスの掛け声と、それに対するハルドとアーシャの力強い応えだけが、ディンドとヴァルトの耳に残った。


※※※


≪先にこの変異種2頭を討つ。アーシャは俺の援護を───ハルドはヴァルトの援護をしてくれ≫
≪はい!≫
≪解りました!≫
≪セレナは、俺たちの隙をつこうとする魔物たちの牽制を頼む≫
≪はい…!≫

 セレナは、ディンドからの指示に【念話(テレパス)】で返すと────短杖を握り直して、改めて現状を確認する。

 やはり、オークやオーガ、それにコボルトは───2頭の変異オーガと対峙するディンドたちを襲う様子はない。ルガレドたちの状況を窺うと、同様で───どちらも周囲を取り巻いているのみだ。

 集落潰しの際、ロードが出て来ると───オーク、オーガ、コボルトに拘らず、魔物たちは遠巻きに見ているだけでロードの戦いには決して手を出さない。

 ロードは、戦い始める前に必ず雄叫びを上げる。だから、それは、魔物たちがロードの雄叫びに委縮してしまうからだと謂れていたが────今ディンドたちが対峙している変異オーガは雄叫びを上げていないところを鑑みると、もしかして、何か別の理由があるのだろうか────と、そんな疑問がセレナの頭を過る。

「む?」

 突然、ヴァイスが声を零して、セレナたちの前に躍り出た。ヴァイスの純白の長毛が淡い光を纏ったかと思うと、ぶわり、と逆立ち────辺りに漂う魔素が、引き寄せられるようにヴァイスの許へ集っていく。

「?!」

 不意に、ヴァイスの正面に広がる空間が歪んだように見えて────セレナは眼を
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