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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第二十七章―双剣―#3
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そこには、リゼラと共に戦場にいるはずのハルドがいた。ハルドは、だらりと下げた右腕を左手で押さえ、苦し気に表情を歪ませている。ケガをしたのだと、一目で悟る。
「腕をやられた!治してくれ!」
ハルドが切羽詰まったように、ラナに向かって叫ぶ。すぐにでも、戦場にいる仲間たちの許へ戻りたいのだろう。
【治癒】を発動しようとして────ラナは躊躇った。
今、ラナは固有能力である【聖域】を行使している。リゼラのように能力と神聖術を同時発動できないラナが【治癒】を発動するためには、【聖域】を解除しなければならない。
【聖域】を解除する────それは、自分たちを護っている防壁を取り払うことに他ならない。
【聖域】を解いたところで、あの暗殺者たちが、この邸に侵入することが限りなく不可能なことは頭では解っていた。
だけど────それでも恐怖が勝り、【聖域】を解除することを躊躇ってしまった。
ハルドは腕をケガしたのだと言っている。見た感じ、他にケガしている様子もない。
それならば────【治癒】でなくとも、ポーションでも治るのではないか。ポーションで事足りるなら、【聖域】を解除せずとも済む。
そう提案しようと口を開くが────ふと、つい先日のラギとヴィドの姿が頭を過った。
ラギとヴィドは、内臓を損傷していた。肌が赤くなってはいたが、それは切り傷などとは違い目に見えるものではなかった。
内臓の損傷はポーションでは治すことはできず────ラナが【治癒】を施さなければ二人は助からなかった。
(もし────もしも…、ハルドくんも内臓を損傷していたら…?)
ポーションを与えるだけでは駄目だ。あのときのように、【
解析
(
アナライズ
)
】できちんと状態を調べた方がいい。
どちらにしろ────【聖域】を解除するしかない。
「…っ」
ラナは、今度は恐怖を押し止めるためでなく────
捩
(
ね
)
じ伏せるために、眼を閉じる。
貧民街で生まれ孤児院で育ったラナは────自分には、ぬくぬくと護られている王侯貴族は勿論、そこらの平民より度胸があると思っていた。
ならず者に絡まれて───あしらったことだって、何度もある。
それなのに、こんな風に怯んでしまう自分が、心底から情けなかった。
ラギとヴィドが大ケガを負ったときも、あんな風に取り乱して────自分本位で神に縋りついて、望み通りにいかないと知ったら罵って────本当に情けない。
リゼラがルガレドを護り支えたいと望むなら手伝いたい────そう言ったセレナ。か弱いお嬢様然とした彼女でさえ、戦場に共に向かった。
それに、つい数日前に戦う訓練をし始めたばかりのエデルだって────リゼラの
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