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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#1
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とは変わらない。状況を見極め、仲間たちと協力して魔物を殲滅する────それだけだ。
確かに、こんな事態は初めてのことであるが────物事が不測の事態に転がることなど、これまでに幾らでもあった。
それでも、その都度、打開策を見出して乗り越えてきたのだ。
(オレも、エイナのことを言えないな)
久しぶりに味わう、肩にかかる背負った愛剣の重量感に────徐々に増す緊迫感に、沸々と血が滾るような高揚を覚えて、ガレスは知らず口角を上げる。
ガレスのその表情、立ち姿は、今や馴染みとなったギルドマスターとしてのものでなく────数多の討伐と集落潰しをその確かな実力で成し遂げ、“剣豪”と称えられたAランカー冒険者のそれだった。
※※※
「…来た」
視界の端に捉えたシルエットに、私は思わず呟く。
ネロの目線は低く、コボルトでさえ巨大に感じられるが────そのコボルトよりも大きいオークを遥かに超す巨体が、列を成す魔物たちの向こうに小さく見える。
「魔獣が現れたのか?」
私の呟きを拾ったレド様が問う。
「はい。ネロが視認できる位置にまで到達しました」
「解った。────皆、準備はできているな?」
レド様は私にそう返すと、仲間たちに問いかける。ネロの視界に集中していた私には、仲間たちの様子を目視することはできなかったが、頷いたような気配は覗えた。
私たちは、すでにエントランスホールで立ち並び、いつでも転移できる状態にある。
「それでは────これより、奇襲を開始する」
群れ成して歩くオークの頭上には、皓々と光を放つ歪んだ円を描く二つの月が浮かんでいる。夜明けまでは、まだ時間があった。
できれば夜が明けてから決行したかったが、仕方がない。
「リゼ───始めてくれ」
「解りました」
レド様の命を受け、私はネロの傍に佇むヴァイスに【
念話
(
テレパス
)
】を送る。
≪ヴァイス、お願い≫
ヴァイスには、私が声をかけたら、魔法を放つよう事前にお願いしてある。
≪了解した≫
ヴァイスから返答が来た直後───ネロの視界が揺らいで、まるで幾つもの断裂が走ったように乱れた。ヴァイスが放った無数の魔素の
礫
(
つぶて
)
が
空
(
くう
)
を裂きながらオークやコボルトに向かっていく。
それは、魔物たちの身体を抉るだけに留まらず、吹き飛ばす。瞬く間に、ネロの眼前にいた魔物たちは向こう側へと飛んでいった。
私はネロとの【
同
(
シンクロナ
)
期
(
イゼーション
)
】を解き、すかさず【往還】を発動させ────目当ての【
転移門
(
ゲート
)
】に繋ぐ。足元に広がった魔術式の光が迸って、私たちを包む。
「ご武運を────」
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