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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#1
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ドには洞察力も考察力もある。皇子として───人の上に立つ者として、十分な資質を持っているのは明らかだ。

 ルガレドに皇子としての資質があることは、この事態にあって────いや、この国の現状において、ダズロには光明に思えた。

 リゼラの主として───伴侶としてもだ。

(おそらく────ルガレド殿下は…、これから表舞台に躍り出ることになる)

 ファルロと会談した時点では───ルガレドは、皇妃一派によって孤立した状態のまま、ひっそりと辺境へ追いやられるだけだと考えていた。

 だから、ルガレドに付き従うリゼラも───立身出世は望めなくても、苦労することになったとしても、余程のことがない限りは皇城にいるより安全だ、と。

(だが────この事態で、ルガレド殿下を取り巻く状況は変わる)

 この事態は、ルガレドだけではなく────きっと、この国の状況が変わる切っ掛けになる。それは勘でしかなかったが、外れることはないとダズロには確信があった。

 ルガレドが渦中に身を置くことになれば、必然的にリゼラも巻き込まれる。だけど─────

(大丈夫だろう────リゼラならば)

 契約の儀に始まって、新成人を祝う夜会───それに、今回の二度にわたる緊急会議。どの場においても、リゼラの振る舞いは───特に冒険者ギルドで行われた緊急会議での献言する様は、堂に()るものだった。

(俺は…、本当に馬鹿だった)

 妻や子供たちと、一度でもきちんと接していれば────改めて、そんな後悔が込み上げる。

 いや────リゼラに関しては、それ以前の問題だ。武の才能になど拘泥せず、あの子自身を見るべきだった。

 “神託”を受けたときには、リゼラが周囲を気遣える聡明な子であることは解っていたのだから─────


 ダズロは、胸に巣食う深い後悔に呑み込まれそうになるのを、何とか押し(とど)める。

 今は────この皇都を魔獣や魔物から護ることだけに集中しなければならない。

 この事態を切り抜けることが出来れば、皇都に滞在する皇王陛下や民を護るのみならず、平定を命じられたルガレドを───ひいてはリゼラを助けることにも繋がるはずだ。

 新たにそう決心して、目線を上げようとしたとき────ダズロは、ベルトに括り付けた小さなポーチの隙間から、赤い光が明滅していることに気づいた。

 ポーチから魔道具を取り出して、確かに点灯していることを確かめる。ダズロは顔を上げ、振り向いた。そして、緊張に静まる周囲に向かって、声を張り上げた。

「予定地点に、魔獣どもの先頭が到達したようだ。よって、これより皇都を出て───待機予定地点に移動する」

 立ち並ぶ面々の表情からは、緊張しつつも、はっきりと闘志
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