こぼれ話Dお嬢様、お茶をどうぞ
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皿の傍に、ソーサーに載せたカップを、静かに置いた。
うん───やっぱり絵になる。
セレナさんとテーブルを見て、私は一人頷く。
円いカフェテーブルに置いた“スコーン”と“紅茶”に、“可愛らしいお嬢様”であるセレナさんは、とてもよく似合っていた。
出来れば、給仕をするのは“メイド”よりも、ロルスかウォイドさん扮する“老執事”にやって欲しかったけど。
それに、カフェテーブルには、白いテーブルクロスをかけられたら、完璧だったのに。いや、それを言ったら────ポットやカップにも、もっと拘りたかった…。
まあ、今回は急だったし───仕方がない。私は溜息を吐いて、諦める。
「どうぞ───セレナお嬢様。本日のスウィーツは、“スコーン”でございます。こちらの“クロテッドクリーム”と苺ジャムを添えて、お召し上がりください」
私が侍女を装って、恭しく───できているかどうかは判らないが、そう勧めると、セレナさんは何故か顔を真っ赤にして、あたふたとしている。
「え───あ、そ、その…」
セレナさんのその狼狽える様子が可愛くて、私は思わず笑みを零した。
「ふふ…、ごめんなさい。これ、今朝作ったばかりのお菓子なんです。ぜひ、セレナさんにも食べて欲しくて」
「わ、私に?」
「ええ。前世の世界のお菓子なので、お口に合うか判らないですけど、よかったらどうぞ」
私がそう言うと、セレナさんは身に纏っているそのワンピースのような、ふんわりとした微笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。とても────嬉しいです…」
スコーンは、セレナさんのお気に召したようだ。
セレナさんは、美味しい────と、その口元を綻ばせた。
スコーンを食べ終え、紅茶を飲みながら────セレナさんが、ふと私に訊ねた。
「あの…、ところで────リゼラさんは、どうして侍女の格好をしているのですか…?」
「ええと…、これはですね────何となくです」
お嬢様のような身なりをしたセレナさんに給仕してみたかったからとは言えず、私は言葉を濁す。
「何となくで────リゼラさんは、侍女までできてしまうのですか…。私より────いえ、ディルカリド伯爵家にいた侍女などよりも、よほど侍女らしかったです…」
セレナさんは、ちょっと落ち込んだように眉を下げた。
「私は以前、しばらく侍女の修行をしていたことがあるので、まったくの素人というわけではないんですよ」
「そうなんですか?」
私がそう言うと───セレナさんは下がっていた眉を上げたばかりか、目を丸くした。
その表情がとても可愛かったので、私はまた笑みを零しながら、紅茶のお替りを注ぐ。
「あ───そろそろ30分経ち
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