こぼれ話Aレシピと硝子ペン
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「リゼ、ここにいたのか」
図書室で作業に没頭していた私は、レド様に声をかけられて我に返った。
「レド様」
今日は、レド様とは別行動をしていた。
私の方が早くお邸に帰ってきたので、レド様が帰って来るまでちょっとした作業をやろうと図書室に籠っていたのだけど────
「すみません、レド様。お帰りになったことに気づかなくて────お出迎えしようと思っていたのに…」
「いや、それだけ集中していたのだろう?ところで、何をしていたんだ?」
レド様は私の傍まで来ると、私の手元を覗き込んだ。
「これは────料理の手順…、か?」
「ええ、料理の材料と分量、作り方の手順です」
ロイドによれば、書類作成をする上で大事なのは書式と読み易い文字とのことなので────文字を書く練習を兼ねて、B4サイズの羊皮紙と硝子ペンを使用して、前世の料理やお菓子のエルディアナ語版レシピを作っているのだ。
「書きためたら製本して、レド様やカデアも閲覧できるように、厨房に置いておくつもりですので───私がいないときに作りたくなったら、活用してください」
「それは、ありがたいな。それがあれば────俺がリゼに作ってあげることもできる」
レド様は嬉しそうに頷く。レド様のそのお気持ちに、私も嬉しくなって笑みを零した。
「ところで───こっちは何だ?これは…、本か?それに、これは───筆記帖なのか…?」
レド様は、“原本”を見て驚愕の表情を浮かべた。
“原本”───【潜在記憶】から再現した、前世の“レシピ本”と、私が前世で家事をするようになって少しずつ作った“レシピノート”だ。
前世でよく作っていた料理はともかく、偶に作っただけのお菓子などは、さすがに細々とした材料や分量は覚えていなかったので、毎回【潜在記憶】を検索していたのだけれど────今回、このレシピ作りを思い立ったのは、それが少々面倒になったのもあった。
そこで、前世の私が愛用していた“お菓子のレシピ本”を再現したのだ。
「ええ。私の前世の世界のものです」
「…これは、すごいな。どちらも紙が滑らかで書き易そうだし、この───本の文字も、絵も…、どうしたらこんなに綺麗に描けるんだ?」
「いえ、それは手描きではないんです」
「では、どうやって描かれているんだ?」
…ええっと、どう説明したものかな。
結局───“印刷技術”のことは、上手く説明することができなかった。
“活版印刷”ならともかく、前世の私が生きていたあの時代の技術は、正直、利用してはいても理解していたわけじゃない。
「…今度、記憶を探っておきます」
「そんなに気張らずに────気が向
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ