こぼれ話Aレシピと硝子ペン
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いたらでいいからな」
レド様は口元に小さく笑みを浮かべて、項垂れる私の頭を優しく撫でた。
「こっちのは、手書きか?」
レド様は、レシピ本からレシピノートへと視線を移す。B5サイズのバインダーだ。
「ええ、前世の私が書きためたものです」
祖母や大叔母に習った和食のレシピや、兄が教えてくれた洋食のレシピなどだ。後は自分で調べたもの。
“スマホ”を持つ前は、図書館でレシピ本を借りてきて、写したりしてたっけ。“スマホ”を持ってからは、“ネット”を使ってレシピや“動画”で調べて、メモを取ったりしてたな。
だけど、やっぱり一番作っていたのは、祖母に習った和食だ。
「リゼは、生まれ変わる前から、努力家だったんだな」
「凝り性なだけですよ」
レド様からそんな風に褒められると、何だか面映ゆい。
「それにしても…、この本や筆記帖を見ただけでも、リゼの前世の世界というのが凄いところだと判るな…。本当に、“違う世界”だ」
「“私の前世の世界”というよりは───“前世の私が生きていた時代”が、ですね。少し時を遡れば、そこまで変わらない気がします」
「そうなのか」
「ええ。ただ…、もしかしたら───古代魔術帝国時代の方が、私の前世の世界よりも、技術は発達していたかもしれません」
そう言うと、レド様は軽く目を見開いた。
「あ───悪い。リゼの作業の邪魔をしてしまっているな」
レド様が、すまなそうな声音で言う。
「いえ、いいんです。どの道、レド様が戻られるまでだけにしようと思っていましたから。続きは、寝る前にやります」
「本当に?」
「ふふ、本当ですよ」
私は笑ってそう返しながら、広げたものを片付け始める。
「それ────使ってくれているんだな…」
レド様が、ぽつりと呟いた。レド様の目線を辿ると────そこには、硝子ペンがあった。
それは、自室のライティングデスクと共に造り付けられた棚に収められていた────セアラ様の形見の品だ。
「ええ、使わせていただいています。これ────お気に入りなんです」
セアラ様の硝子ペンは3本ある。
だけど、私はこれが一番気に入っていて────いつもこれを使っている。
透明感がありながら、前世の“桜”の花びらのように淡く“桜色”に色づいているのも────繊細で複雑につけられた模様も、いつまでも眺めていたい美しさだ。
「そうか…。それは────嬉しい。その硝子ペンは…、俺が母上に贈ったものなんだ」
レド様が喜びを滲ませて、柔らかく微笑む。
「え───そ、そんな大事なものだったんですか…!?ど、どうしよう───私、これ、【最適化】してし
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ