こぼれ話@トンカツリベンジ
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「レド様────今日は…、一緒にトンカツを作りませんか…?」
私が恐る恐る提案すると、レド様は眼を見開いた。
初めて和食を作った日────すなわち、トンカツを作った日からそんなに日は経っていない。
いつもなら、同じメニューを作るのは、もう少し時間を置いてからにするところだが────初めてレド様と一緒に和食を作ったのに、あんなことになってしまったので、もう一度トンカツを作って、楽しい思い出に塗り替えたかった。
それに、あのとき、レド様は嫌な気分を抱えていて、きっとトンカツをちゃんと味わっていない。だから、もう一度食べて欲しいというのもある。
「その…、リゼは───あのときのことを思い出して、嫌な気分になったりしないか…?」
「やっぱり、思い出して…、嫌な気分になってしまいますか?」
「俺は大丈夫だ。リゼが嫌でなければ、作りたい」
レド様は、無理して言っているわけではなさそうだ。私はほっとして、緊張していた表情を緩めた。
「それなら────今日はトンカツにしましょう」
オーク肉の赤身と脂身の間にある筋に切り込みを入れてから、レド様と手分けをして、包丁の背で肉を満遍なく叩いていく。
レド様の方を横目で窺うと、レド様は何だか楽しそうに肉を叩いていて───私は、またもや、ほっとした。
それだけ確認すると、私は肉を叩くのに没頭した。
サンドウィッチにする分やストック分も一気に作るつもりなので、肉はかなりの枚数になる。
レド様も私も一心不乱に叩き続けた。
肉を叩くのが終わると────次は、塩胡椒を振りかける。
「今日は、ソースではなく、お醤油をかけようと思っていますので───夕食の分は、塩は前回より控えめにします」
「醤油を?」
「ええ。ソースでも美味しいですけど、お醤油で食べるのも美味しいですよ」
「そうなのか。それは、楽しみだ」
レド様は、口元に小さな笑みを浮かべた。
「明日は、カツサンドにするつもりです。その…、前回は一緒に作れなかったですし────明日は一緒に作りましょう」
「ああ」
レド様は、嬉しそうに笑みを深める。私も嬉しくなって、笑みを零した。
前回は、私以外の分はナイフとフォークだったから、そのままお出ししたけど───今回は、皆お箸で食べるので、予めトンカツを切り分けることにする。
今回も色鮮やかな狐色に揚がっているトンカツに、ナイフを入れる。
サク、と衣がいい音を立てた。切り分けると、満遍なく色の変わった肉の断面が露になる。うん───中まで火が通ってる。
サンルーム産の張りのあるレタスと千切りキャベツを敷き、櫛切りトマトを添えたプレートに、切り分けたトンカツを載
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