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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十六章―黎明の皇子―#10
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う。


 ヴァルトさんが顔を上げる。その双眸には、ディンド卿と同じ────強い決意のようなものが覗えた。

「ワシは…、以前にもお話ししたと思いますが────長いこと仕えるべき主家に不信を抱いていました。そのせいで、忠誠を捧げる気になれず────兄や親族たちの言う通り、自分には忠誠心というものがないのかもしれないと思ったこともありました。正直、ルガレド殿下に仕えると決めたのはお嬢とハルドのためだけで────勿論、仕えると決めたからには最善を尽くすつもりではありましたが、もし仕えるに値しない主であった場合にはお嬢とハルドを連れて逃げようと────そう考えておりました。ですが────それは杞憂でした」

 ヴァルトさんは、表情を緩めて笑みを()く。

「ルガレド殿下も…、隊長さん───いや、リゼラ様も、忠誠を捧げるに値するお方だ。ワシは、あなた方に─────この命尽きるまで、お仕えしたい。どんな形になろうと、最期までお供したいのです」

 ヴァルトさんの笑みには喜びが満ちていて────レド様と私に忠誠心を持てたことが嬉しいようだった。

 もしかしたら────ヴァルトさんは、ディルカリド伯爵に忠誠心を持てなかったことで、自分でも欠陥があるように思っていたのかもしれない。


「セレナさん────貴女は、どうなのですか?」

 嬉しそうなヴァルトさんを微笑んで見ているセレナさんに水を向けると────セレナさんは、慌てて私の方を向いた。

 セレナさんが、落ち着いて話し出すのを待つ。

「私も、ディンドさんとヴァルトと────同じ気持ちです。ルガレド殿下とリゼラさんは、主として仰ぐに相応しい方だと思っております。それに────殿下のお志を、ディンドさんからお聞きしました。私は…、兄のような犠牲者を出したくない。その念願を叶えるためにも────殿下のお力になりたいのです」

 セレナさんは眦を下げて、はにかんだ笑みを浮かべて続ける。

「そして────私はリゼラさんの友人です。リゼラさんが殿下を護り支えたいと望んでいるのなら────私はそれをお手伝いしたいのです」
「セレナさん…」

 私は、そう言ってくれたセレナさんの顔を────改めて見る。

 育ちを覗わせる楚々とした仕種も、護ってあげたくなるような儚げな容貌も変わらない。だけど────その醸す雰囲気は、あの地下調練場のときとはまるで違う。自信なさげに揺れていた瞳は、今はその強い意志に輝いて見えた。


 ディンド卿、ヴァルトさん、セレナさんは────存在を変えてまで、レド様と私と道を共にすることを望んでくれている。三人のその決意に────胸が熱くなる。

「レド様」

 私は振り向いて、レド様に伺う。レド様は喜色の滲んだ眼差しを
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