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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十六章―黎明の皇子―#10
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から、続々と報告が入る。『壁』とは、皇都を囲う城壁のことだろう。

「リゼ────精霊獣か?」
「はい。魔獣たちが集落から出て、皇都に向かって街道を進んでいるとのことです」
「ついに出て来たか。巡回している騎士たちは」

 レド様が言い終わる前に、またもや【念話(テレパス)】が入る。

≪魔物たちが、前から来る人間たちと鉢合わせをしました。魔物を見た人間たちが逃げていきます≫
≪魔物たちは人間たちを追わずに、横道に入りました≫

 横道────あの枝道のことだろう。ダウブリム方面の街道から分岐する道は皇都付近では、あの枝道しかない。

 それを聞いて、私は思わず安堵した。魔獣たちがマセムの村を狙っていると確信はあったけれど、間違っていた場合は後手に回る破目になるので、やはり一抹の不安があった。

「“デノンの騎士”は無事、退却できたようです。それから────魔獣たちはあの枝道に入った、と」
「予定通りだな」

 レド様はそう言った後、何かに気づいたように懐に右手を入れる。取り出した右手には、懐中時計より二回りほど大きい───突起も飾りもない簡素な円盤が握られていた。円盤は、赤味を帯びた鈍い光を明滅させている。

「旦那様、それは?」

 そう訊ねるラムルの眼は、心なしか爛々としている。

「国から貸与されたもので───離れた場所に信号を送れる魔道具だ」

 距離に制限があるし、単純に明滅するだけの代物だが───相互にタイムラグなく信号を送ることができる、とても便利な魔道具だ。

 騎士・貴族の連合部隊を指揮するイルノラド公爵と、冒険者を指揮するガレスさんに一つずつ預けてある。

 これは、魔獣が枝道に入った報せだろう。この報せを寄越したのは、イルノラド公爵に違いない。


「魔獣たちが奇襲予定地点に到達するまで、少し時間がかかるはずだ。ここでこうしていても仕方がない。ダイニングルームにでも移動するか」

 魔道具をジャケットの内ポケットに戻しながらされた、レド様の提案に私が賛成しようとしたとき────不意に、ディンド卿が私たちのすぐ前まで進み出た。

 ディンド卿の後ろには、何故か、ヴァルトさんとセレナさんもいる。ディンド卿は、何か強い決意を湛えた眼で私を見る。

「その前に────リゼラ様にお願いしたいことがございます」

「私にお願いしたいこと────ですか?」

 どうして突然そんなことを言い出したのかが───その願い事の見当がつかず、私は訊き返す。三人は片膝をついて、(こうべ)を垂れた。

「リゼラ様────どうか、我々にご加護をいただけないでしょうか」

 思ってもいなかった申し出に、私は眼を見開いた。

「それは────私の加護を受けるとどうな
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