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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十六章―黎明の皇子―#8
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ディンド卿が、すかさず私に訊ねる。
「魔獣たちがその枝道に入ったことがあるはずだと、どうして言い切れるのですか?」
「石壁です」
「石壁?」
「集落のあばら家には、大量の石が使われています。見た限り───どれも、大きくて角のない滑らかな石でした」
「あっ!そうか、川か───川原の石か…!」
私とディンド卿のやり取りを聴いて、ガレスさんが合点がいったように叫ぶ。
長い間流水に曝されていた川原の石は、角がとれてツルツルとしている。
「なるほど。確かに、あの枝道を少し行ったところに川があった。言われてみれば────あの川が、ヴァムの森に一番近い」
バドさんが、思い出したように呟いた。
「リゼは、マセムの村に行ったことがあるんだな?」
「はい、何度か」
レド様の問いに頷く。冒険者として依頼を受けて行ったこともあるし、最近では野菜の買い付けでも訪れている。
そういえば、ジグかレナスを伴うことはあっても、レド様と一緒に行ったことはなかったな。レド様をつき合わせるのは申し訳ないので、単独行動のときにしか行かないし。
それに、私が野菜の買い付けのために農村に行くことはレド様も知っているけれど、それがマセムの村だとは話していなかった気がする。
「それでは───リゼ。その枝道の様相を詳しく教えてくれ」
◇◇◇
一足先に大会議室を辞して───レド様とディンド卿と共に、姿をくらませたジグとレナスを伴って、階下へと降りると、そこには今回の討伐に参加予定の冒険者たちが、ひしめき合うように待機していた。
すでに階段を降りる前に服装を替え、レド様の瞳も銀色に装い済みだったが────それでも、私たちの姿が目についたらしく、冒険者たちの視線が一斉に向けられる。
その中には、ラギとヴィドもいた。冒険者たちの合間から、こちらを見ている。
「アレド───子供たちに声をかけて来てもよろしいですか?」
現在、このギルドにいる孤児院出身の冒険者はラギとヴィドだけだ。他は、高額報酬が見込めそうな地域に出向いていた。
ラギとヴィドも、所属するパーティーの一員として討伐に参加することになっている。事前に話をする機会は、今しかない。
「ああ。行ってくるといい」
レド様の許可を得られたので、真っ直ぐ、ラギとヴィドの許へと向かう。私が進むと、何故か、私に気圧されたように、周囲の冒険者たちが道を開ける。
何だろう、この雰囲気…。冒険者たちには苦手意識を持たれているとは感じていたけど────何か酷くなったような…。
「ラギ、ヴィド」
こんな状態で話しかけたら、ラギとヴィドも周囲から奇異な目で見られるようになってしまうかもしれない──
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