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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十六章―黎明の皇子―#7
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さんが会議室に入って来たときから物言いたげにしていたことに、レド様も気づいていたようだ。

「つい先程、集落を監視していた者から連絡がありまして。魔物たちが───ゴブリンを食べ始めた、と」

「ゴブリンを?その様子では、ただの空腹を満たすための食事というわけではないのだな?」
「はい。報告によれば、ゴブリンを食い尽くす勢いだと────手当たり次第に…、成体だけでなく、まだ成長し切っていない子供をも食べている、と」

 ガレスさんが言いながら、顔を顰める。

 何故────今そんなことを?

 ゴブリンは、他の魔物に比べて内包する魔力はかなり少ない。急いで変異種となる───あるいは魔獣化するために魔力を摂取するには、ゴブリンでは役不足だ。

 集落にはオーガやオークもいる。そういった目的なら、共食いとなってもオーガかオークを食べるはずだ。

 それならば、何故────

「もしかして────ゴブリンが不要になった…?」

「リゼ?」
「レド様、魔獣───魔物たちは、集落を捨てるつもりなのかもしれません」
「そう考える根拠があるのだな?」

 レド様の問いに、私は頷く。

「あの集落では、おそらく他の魔物の食糧にするために、ゴブリンを閉じ込めて繁殖させていました。それを食べ尽くすのなら───成体だけでなく、成長し切っていない子供まで食べてしまうのなら…、もう繁殖させるつもりはないということです」

 考えてみれば────【隠蔽(ハイディング)】が機能しなくなった今、あの場所に固執していてもメリットはない。いや、それどころか、デメリットしかない。

「加えて───あの集落は、古代魔術帝国の遺跡の上に築かれています。人工物で覆われた地面には、通常の集落のように木の柱を突き立てることができない。だから、石を積み上げてあばら家を造るしかなかった。同様に、丸太を連ねた塀で囲って集落を護ることができません。これまでは古代魔術帝国の遺産によって護られていたから、必要がなかった。でも───もうその遺産は機能していない」

 魔獣や魔物たちの魔力量なら、ディルカリド伯爵のように、魔導機構に魔力を直接注いで発動させることも可能ではあるが───それには、魔術式の中央部分に魔力を注がなければならない。

 そうしようとしないところを見ると、それを知らないのだろう。

 中央部分にはゴブリンの檻があるので、偶然に魔獣や魔物たちが載って魔力を吸い取られる可能性も低い。

 よって、地下施設の【魔素炉(マナ・リアクター)】を停止しない限り、【隠蔽(ハイディング)】を起動させることはできない。

「だけど、今から石を積み上げて塀を造るには────時間がかかります。それに、あの集落には見張り台や物見櫓もありません
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