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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十六章―黎明の皇子―#6
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は────そちらの何もしない虧月騎士団と偃月騎士団とは違い、この一年ずっと働き詰めだったので────し、新年度が始まる前に休息をとらせたのです!」
「…何もしない?虧月騎士団と偃月騎士団は、グリムラマ辺境伯軍の尻拭いのためにエリアエイナ地帯に駐在しているようだが?」
「そ、それは────何もしないから、年度の最後くらい勤めを果たすよう、私が強引に行かせたのです!」
「何もしない────つまり、命じても動かないということだろう?それなのに、強引に行かせることなどできるのか?そもそも、貴様の言い分が真実であるならば────貴様は防衛大臣でありながら、騎士団の采配もできない無能だということになるが?」
「なっ────わ、私は無能ではない!その男が、公爵という身分を笠に着て、私の言うことをきかないだけだ!」
イルノラド公爵が、身分を笠に着て────何もしない?
ビゲラブナの苦し紛れのその言い訳に、沸々と込み上げるものがあった。
これは────怒りだ。
だって────私は調べたから知っている。
今年だけでなく、この十数年────イルノラド公爵は、あちこちに行かされていた。ファルリエム辺境伯が亡くなり、辺境伯家門が解体されてしまってからは、落ち着いて邸に滞在する暇もないほどだ。
タイミングもあるかもしれないが、実際、この10年一度として───あの邸で、私は公爵を見かけたことはない。
私が置かれていた状況にイルノラド公爵が気づかなかったのは、公爵が私にあまり関心がなかったからだと考えているのは────燻る怒りが消えないのは、今も変わらない。
それでも────自分でも不思議なほど、ビゲラブナの言い様は許せなかった。
「それは、おかしいな。見る限り、
虧月
(
きげつ
)
騎士団と
偃月
(
えんげつ
)
騎士団の兵士は、いないことの方が圧倒的に多い。珍しく戻って来たと思っても、すぐにいなくなる。逆に、
彎月
(
わんげつ
)
騎士団の兵士が不在であることはめったにない。ごく偶に見かけないことがあっても、数日で戻って来る。毎回、兵士たちにケガした様子も装備が大して劣化している様子もないから、近場の安全地帯で軽く演習でもして来たのだろうと、俺は考えていたのだが。まさか、彎月騎士団は、虧月騎士団と偃月騎士団の兵士を連れて行っているのか?」
レド様の反論に、ビゲラブナは醜いその顔を引きつらせて絶句した。
レド様はビゲラブナに向けていた鋭い視線を逸らし、イルノラド公爵へと向き直る。
「イルノラド公爵、ガラマゼラ伯爵────今回、連れ帰った騎士はどのくらいになる?」
「は───辞令式に出席すべき上級騎士を連れ帰りはしましたが…、現在、ビゲラブナ伯爵の命により、ほとんどの者が再び皇都を出ております」
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