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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十六章―黎明の皇子―#6
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はレド様がビゲラブナに───皇妃一派に反感を買うことになる。

 そう逡巡していたそのとき────不意にロビンから【念話(テレパス)】が入った。

≪姫────シュロムが『止めるな』と言っています≫
「!」

 おじ様がそう言うのなら────このまま止めない方がいいのだろう。

 おじ様がレド様を悪いようにするはずがない。
 私は、おじ様を信じて────レド様を止めないことに決める。

 レド様は、その怒りに塗れた右眼をビゲラブナに見据え、続けた。

「それに、500頭もの魔物が大したことがない────だと?魔物は、人間を相手にするようなわけにはいかない。コボルトでも、1頭に対して兵士なら最低2人。オーク1頭に対して、騎士でも最低3人。オーガならば、最低でも騎士5人を割り当てることを想定しなければならない。変異種となれば、その2倍から3倍の人数が必要となるし────魔獣ともなれば、下手をすれば5倍以上だ。単純に計算しただけでも、確実に殲滅するには、騎士を約2000人投入しなければならない事態だというのに────大したことがない、だと?長いこと騎士と兵士を采配する立場についていながら────何故、そのような発言が出る?」

 レド様の声音には、聞く者が耳を傾けずにいられない重みがあった。

 付け焼刃などではなく────“一度目の人生”での将軍としての経験に裏打ちされた重みだ。

 瞬く間に、緩んでいた空気が緊張感を取り戻す。

 レド様はそこで一度言葉を切り、向かい側───イルノラド公爵、ガラマゼラ伯爵とその隣の空席を一瞥してから、再びビゲラブナを睥睨した。

 ビゲラブナは蛇に睨まれた蛙のように、ひっ、とまたも声を漏らして息を呑む。

「そもそも────これはどういうことだ」

「は、ぇ、な、何が」

「何故────護国を司るはずの騎士団が、どれ一つとして動かせる状態になっていない?不測の事態に備えて、必ず騎士団の一つは皇都で待機させておかなければならないはずだ。ましてや、辞令式まで1ヵ月を切ったこの時期に、何故────どの騎士団も待機させていない?」

「な、何で」

「状況を鑑みれば判ることだ。虧月(きげつ)騎士団、偃月(えんげつ)騎士団所属の兵士は、現在、この皇城にはいない。虧月騎士団団長のイルノラド公爵、偃月騎士団団長のガラマゼラ伯爵だけがいるということは、何処かに派遣されていて、騎士団上層部だけが辞令式のために戻って来たということだろう。逆に───彎月(わんげつ)騎士団所属の兵士は皇城に詰めているのに、団長のゲスミル伯爵は皇都にすらいない。この緊急会議に空席ということは、副長、団長補佐も同様に不在なのだろう?これでは────いくら彎月騎士団所属の騎士や兵士が皇城に詰めてい
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