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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十六章―黎明の皇子―#3
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事な女性を泣かせてしまうとは────本当に情けないですよ、旦那様」
「ああ、その通りだな…」
地下遺跡の修繕よりロウェルダ公爵との面会を優先したことは、確かにリゼラに意見を求めはしたが、ルガレドは自分で決断したつもりだった。
だが、思い返してみると、あの流れでは、リゼラが自分で決断したのだと思ってしまったのも無理はない。
ルガレドが、きちんと言葉にすべきだったのだ。
「旦那様────貴方は我々の主です。
現状、古代魔術帝国に関することはリゼラ様に頼らざるを得ないのは仕方のないことではあります。ですが────責任を負わせてはなりません。
最終的な決断と責任は────主である貴方が負うべきです」
「ああ────これからは…、肝に銘じる」
嗚咽を漏らさないよう声を殺して、一人静かに泣いていたリゼラのことを思い出すと────胸が軋んだ。
もう二度と、あんな風にリゼラを泣かせたくない────いや、絶対に泣かせない。ルガレドは、心の中でそう固く誓う。
「そうとなれば────目下の厄介ごとを片付けてしまわなければ、な」
今回問題となっているヴァムの森は、東門を出たところに広がっている森だ。リゼラの大事な孤児院は、その東門のすぐ側にあった。
孤児院に───子供たちに何かあれば、リゼラは確実に悲しむ。何か起こる前に、とっとと壊滅させてしまうに限る。
状況を聴くに、冒険者のみでは手に負えない───国も動かざるを得ない事態だ。
しかし、あの防衛大臣とは名ばかりのベイラリオの腰巾着ビゲラブナは、それでも事態を軽んじて────おそらく、騎士団や兵士を動かすことを拒否して、ルガレドと冒険者に押し付けようとするに違いない。
だが────焦燥などは、微塵もなかった。
今のルガレドには、頼れる仲間たちがいて────リゼラが繋いでくれた縁がある。
これまで培ったことに加え────前の人生で培った知識と経験もある。
何よりも────半身ともいうべきリゼラがいる。
リゼラが傍にいてくれれば、きっと────どんなことも切り抜けられる。
ルガレドは、考え得る“最悪”と“最良”、その他様々なパターン────そして、それぞれの状況での最善を導き出すべく思考を廻らせる。
思考に没頭し表情が抜け落ちたルガレドは、ともすれば冷徹にも見えたが────そこには、“将軍”としての確かな風格があった。
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