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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十六章―黎明の皇子―#3
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たのだ。隠していては───レド様に、(いたずら)に不安な思いをさせるだけだ。

「レド様が先程まで見ていた───その夢は…、おそらく前世の記憶です」

 レド様が驚いて、私を抱き込んでいた腕を緩める。

 そして────困惑した表情で反論した。

「いや…、それはあり得ない。前世であるなら────リゼやエルのように、生まれ変わる前の別人であるはずだ。あれは────あれは別人などではなく…、紛れもなく俺そのものだった」

「確かに、その記憶の中の人物は…、レド様ご本人には間違いありません。
レド様は────お亡くなりになった後…、時を遡って再び生まれ直したのだと────そう聴いています」

 私の言葉に────レド様が眼を見開く。

「リゼは…、知っていたのか?」
「…はい。レド様を護る身として────レド様の事情を…、教えてもらいました」

 眼を見開いたまま、少し絶句した後────レド様は思い至ったみたいで、言葉を溢すように呟いた。

「そうか────母上だな…?他は存在自体は変わらないのに、母上だけがまったく違う…。どうやったのかは判らないが────母上しか考えられない」

 敏いレド様が、セアラ様の成したことに───セアラ様が何を代償にしたのか、気づかないはずがない。

 きっと私と出逢う前だったなら────セアラ様の違いを訝しく思っても、疑問が掠める程度で済んだだろう。神ならぬ身で、セアラ様がそのような奇跡を起こせたなどと考えもしなかったに違いない。

 レド様は────込み上げる何かを押し込めるように、瞼を固く閉じた。

 おそらく、セアラ様に犠牲を払わせ────挙句、死なせてしまったことを悔いている。


 ああ───レド様には、こんな表情を───思いを…、させたくなどなかったのに────


「ごめんなさい───ごめんなさい…、レド様…」

 視界がぼやけて、頬を熱いものが伝った。先程から泣いてばかりで情けない。辛いのは、私ではなく────レド様の方なのに。

「何故、リゼが謝る?」
「私が────あのとき、先に【最適化(オプティマイズ)】をしてしまえば───レド様が前世を思い出してしまうことなんてなかったのに────こんな…、辛い思いをさせることなんてなかったのに─────」
「リゼ…」

 レド様は、また私を抱き寄せて────私の頭に口づける。

「リゼのせいじゃない。あのときロウェルダ公爵との面会を優先したのは、俺の決断だ。そもそも────リゼの決断だったとしても、俺が記憶を取り戻したことが、リゼのせいであるわけがない」
「でも…っ」

「あれは────おそらく…、“祝福”の効果だ。まるで、仕組まれたように───誘われるように、あの魔術式上
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