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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十六章―黎明の皇子―#2
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にシルエットが変わる。現在の形───“ヴァムの森”へと。

 良かった────冒険者らしき影は見当たらない。そのことに安堵しながら、なおも観察すると───森の後方近くに、円く刳り貫かれたような空き地が見て取れた。

 位置的には───ラギとヴィドが魔物の集落を見たのは、この辺りのはずだ。この空き地に魔物が集落を造ったということなのだろうか。

 とにかく───確認するためには近くまで行ってみるしかない。

「レナス───森の奥まで入るから、念のため、【認識妨害(ジャミング)】を腕時計のものに切り替えて。それと、【冥】を携行しておいて」
「かしこまりました」


◇◇◇


 レナスと共に、森の中を進む。精霊獣の棲むあの森とは違って───この森は、木々はそれほど密集しておらず点在してるだけで、灌木など下草の方が目立つ。

 だからこそ、日光が木々に遮られることなく届き、低ランカーの稼ぎになるような薬草などが育つことができるのだ。

 私は数年振りに入った森の様子に少しだけ懐かしさを覚えながら、奥へと向かう。

 とある地点で、踏み出した足元の草が赤黒く変色していることに気づいて───私は足を止めた。これは…、血?

 見回したら、所々に血の跡がある。血の跡を辿っていくと───血だけではなく、地面が抉れて土が剥き出しになっている個所が目についた。視線を上げれば、幹が抉れた木や潰れた灌木もある。

 どの痕跡も、それほど時間は経っていないように見えた。

 これは────おそらくラギとヴィドが魔物と交戦した跡だろう。

「………」

 それにしても、ラギとヴィドの二人分だとしても、かなりの出血量だ。周囲の状態から、強い力で転がされたことも、吹き飛ばされたことも窺える。

 これは大ケガどころじゃない。ラナ姉さんが神聖術を使ってくれていなかったら───ラギとヴィドは命を失っていたかもしれない。

 そう思うと───今更ながら、血の気が引いた。

 果物や薬草などが入った血と土に汚れた麻袋は、灌木の陰で見つけたものの───ラギとヴィドの剣は見当たらなかった。二人を襲ったというオーガが持ち帰ったに違いない。

「…行こう、レナス」
「はい」


 なおも進んで行くと────前方の木々の合間から、あばら家らしきものが見えた。

 魔獣や魔物は魔力に敏感なので、いつもなら自分の魔力を周囲の魔素などに紛れさせて気配を消すところだが、魔素が少な過ぎてできそうにない。

 私は考えた末、白炎様のときと同様に、固定魔法【結界】を応用することにした。

 私とレナスをいつもより薄い───けれど、魔力を漏らさない程度の【結界】で覆って、ギリギリまで近づく。

「っ!」

 木々の
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