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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十六章―黎明の皇子―#1
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は戸惑いがちにまた口を開く。

「ヴァムの森だし、魔物はめったにいないって解ってたけど───ボクたち、ちゃんと警戒していたんだ。それなのに───マーデュの実を見つけて摘んでたら、いきなりオーガが後ろに立っていて───それまでは木とか草しかなかったのに───魔物の後ろの方に…、集落が───魔物の集落があったんだ…」

「集落が…、ヴァムの森に?」

 それも────突然、現れた?

「ヴィドが言ってることは本当だよ。集落があったんだ。それに───本当に…、いきなり現れたんだよ」

 私がヴィドの言葉を信じていないと思ったのか、ラギが援護するように言葉を継ぎ足す。

「オレたちだけじゃオーガには敵わないから、逃げ出したんだけど───追いつかれて…、戦うしかなくて───でも、やっぱり敵わなくて、剣を囮にして何とか逃げて来たんだ…」

 そこで、言葉を切って────ラギは顔を伏せた。

「ごめん、リゼ姉───リゼ姉にもらった剣、失くしちまった…」
「ごめんなさい、リゼ姉ちゃん…」

 ラギとヴィドは、悔し気に────悲し気に、私に詫びる。

 ラギとヴィドの剣は、二人が冒険者になったときに私が贈ったものだった。

 二人に限らず、孤児院の子供が冒険者になると、私は初心者に相応しい───だけど、それなりに質の良い装備一式を贈ることにしていた。

 ラギとヴィドは、身体が成長したこともあり防具は新調したが───剣は未だに大事に使ってくれていたのだ。

 そのことに胸が温かくなるのを感じながら────私は俯くラギとヴィドに言葉をかける。

「気に病まないで、二人とも。私が贈った剣が、二人の命を助けてくれたのなら────贈った甲斐があったよ。ラギとヴィドが…、ちゃんと戻って来れて────本当に良かった」

 元より、私が冒険者となる子供たちに装備を贈るのは────命を落とすことなく戻って来て欲しいがためなのだから。

 顔を上げたラギとヴィドに笑みを向けると、二人は眼を潤ませた。


「話は戻すけど───ラギ、ヴィド。二人はオーガに襲われた後、真っ直ぐ孤児院に戻って来たの?」

 ヴァムの森のすぐ側にある東門からは、冒険者ギルドよりも孤児院の方が圧倒的に近い。ボロボロの状態では、孤児院に辿り着くだけで精一杯だったはずだ。

「ああ。ヴィドも気絶してたし、オレもケガしてて────とにかく孤児院に戻らなきゃって思って…」
「では、ギルドにはまだ報告していないのね?」
「あ───そういえば、してない…!」

 私は懐中時計で時間を確かめる。

 まだ早朝といっていい時間帯ではあるが───冒険者なら、すでに動き出している時間だ。

 もし、低ランカーの冒険者が採取のためにヴァムの森に向か
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