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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#16
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と畳みかける。

「今、お前が脱落してしまっては、皇妃一派の思うつぼだ。俺が脱落しても、だ。お前が脱落してしまわないためには、ファミラの犠牲が必要で───俺が脱落しないためには、リゼラの犠牲が必要なんだ。だから…、どうか解ってくれ」

 救国という大義を前にして、つまらない感情論で足を引っ張ろうとするダズロを、必死に説得している─────それが今まさに自分がしていることだと、ウォレムは本気で信じていた。

 しかし、ダズロは、説得されるどころか───先程よりも強い怒りを全身に湛えて───ウォレムを睥睨する。

「俺が脱落しないために、ファミラの犠牲が必要────だと?」

 ダズロの声は、怒りのあまり震えている。

「俺は───ファミラの現状が判った時点で、ちゃんとお前に相談した!あのとき変更すべきだったんだ!強行しておいて───邪魔になったから殺すだと?!ふざけるな…!!」

「ダズロ、落ち着け…!」

「リゼラのことも一体何だと思っている?!リゼラは───虐げられているルガレド殿下のお力になれればと、親衛騎士となることを自ら引き受けたんだぞ…!それなのに────お前の保身のために…、ルガレド殿下諸共殺すだと?!ふざけるのも大概にしろ…ッ!!」

 ウォレムは、再び、胸の中で舌打ちをした。ダズロは、殊勝を装った娘の戯言を完全に信じ込んでいるようだ。

 どう説得するべきか───考えあぐねるウォレムに、ダズロは言い捨てる。

「何が────必要な犠牲だ…!!」

「ダズロ、いい加減、聞き分けろ。本当は解っているのだろう?自分が、大義の前の些事で───ただ駄々を捏ねているだけなのだと」

「いい加減にするのはお前の方だ───ウォレム!お前の何処に大義などある?!お前の失態を挽回するためにファミラを殺し───お前の保身のためにリゼラを殺そうとしているだけはないか!教会に魔獣など放って───“デノンの騎士”が間に合わなければ、危うく大惨事になっていたところだ…!!」

「“デノンの騎士”だと?」

 “デノンの騎士”が動いたという事実を知らなかったウォレムは、驚きに目を見開いた。

 “デノンの騎士”は、防衛大臣であるビゲラブナの管理下にはない────皇王直属の騎士だ。

 すなわち、皇王が教会に遣わしたということに他ならない。

 それだけでなく───魔獣が平民街に被害をもたらす前に討伐されたということに、ウォレムは疑問を覚える。

(“デノンの騎士”が動くのが────皇王に話が通るのが早過ぎる)

 魔獣が現れたと発覚する前に、遣わされたとしか思えない。

 それは───皇王もしくは皇王に近しい者に、事前にウォレムたちの計画が知られていたということだ。

 それでは、その─
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