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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#16
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ようとして、ダズロの側近セロムが上半身を縄で縛られたペギルとヒグスを引き連れているのを見て、ウォレムは、ダズロに全てを知られたのだと悟る。すなわち───ダズロの娘たちを犠牲にしようとしたことを。

 それに────おそらく計画は失敗したのだろうということも。

「ダズロ───聞け、これは」
「このクズどもから、すべて聴いた。ウォレム───貴様…、ファミラを魔獣に襲わせて殺すつもりだったらしいな。その上───都合の悪いところを見られたリゼラを始末するために、ルガレド殿下を陥れるつもりだと?ふざけたことを…!」

 ダズロに怒りが籠もった声音で遮られて────ウォレムは小さく舌打ちした。

 ダズロは、騎士団を任されるだけあって、戦場では冷静に戦況を見極めて采配をすることができる男なのだが────それ以外では些か短気で、すぐに頭に血が上る。

 こうなると、なかなか他人の言葉を聴こうとしない。


 ダズロに知られた原因と思しきペギルとヒグスを睨むと、ひっ、とペギルが顔を青くして短く悲鳴を漏らした。

 その様子から、全てではないかもしれないが────計画の概要を明かしたのはペギルだということが見て取れる。

 ペギルなら、少し脅すだけで簡単に吐いただろう。

(ちっ、ペギルの奴め…!)

 もっと早く始末しておくべきだった────そんな後悔が過る。

 元騎士でジェミナに恨みがあるというだけで、ヒグスと共に引き入れてみたものの───それが失敗だったと悟るのに時間はかからなかった。

 女受けする顔立ちのペギルは───自惚れがかなり強く、男女の別なく他人を見下している。

 情報収集を任せても、情報を聞き出すどころか(いさか)いを起こすばかりで、ヒグスよりも使い物にならない上───ヒグスとは違って、簡単に裏切りそうで信用ならない。

 裏切ることがなかったとしても───目的を達成した後、新たな害悪となることは目に見えて明らかだ。

 だからといって、すでに野放しにすることもできない。

 今回の計画は、ペギルを始末することも目的の一つだった。友人であるペギルを切り捨てることを躊躇うヒグスに、定期的にジェミナを探らせていて知ったペギルの所業を教え───どうにかその気にさせたというのに。


「ダズロ、お願いだから聴いてくれ。確かに───今回のことは、お前にとっては腹立たしいことだろう。娘たちを失うことになるのだから。だが───これは、必要な犠牲なんだ」

「必要な───犠牲?」

「そうだ。我らの悲願は────何だ?ジェミナという毒婦から、この国を取り戻すことだろう?これは────そのために必要な犠牲だ」

 ウォレムは、ダズロが耳を傾けたことに食いつき───何とか説得しよう
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