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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#15
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確かだ。

 それまで周囲から気味悪がられるだけだったエデルにとって────あれは、人生の転機だった。

 何故、この人には解ったのだろう────エデル本人でさえ解らなかったのに。そんなことを思いながら、エデルはただリゼラを見つめる。

 エデルは、ふと既視感を覚えた。

 そういえば────リゼラに対してそう思ったのは、初めてではないことに思い当たる。

 以前、エルの代役となったリゼラに演技の指導をしていたとき───会話をする中で、そんな風に感じたことが時々あった。

 エデルの言葉が表面上のものだと解っているリゼラは、大体の言葉は当たり障りなく受け流したが────時折、こうやって真剣に返してくれた。

 それは、いつも────エデルが本心で語ったときや、エデルの自覚していない本音に対してだった。

(ああ…、そうだ────だから、僕はリゼさんの傍にいたいんだ。リゼさんとは、ちゃんと話をしていると────対話をしていると…、感じることができるから────)

 自分の在り方が解らず、常に誰かの人格を演じているエデルには、誰と会話していても、セリフを交わしているようにしか感じられなかった。

 罵詈雑言も、称賛の言葉も、身を案じてくれる言葉さえも───それは演じている表面上の人格に対してのものであって───エデル自身に向けられているようには思えなかった。

 だけど、リゼラと話しているときは違う。リゼラは───表面上の言葉とエデルの本音を聴き分けて反応してくれる。

 ルガレドに言ったことは嘘ではない。リゼラは、エデルが演じる人格を替えても態度や対応を変えたりしないから、気が楽だと思っていたのも本当だ。

 だが───そもそも、舞台以外で演じる人格を替えないようにしているのに、リゼラの前でしてしまうのは────どんなに演じる人格が違っても、リゼラのエデルを見る眼が変わらないからだ。

 リゼラのあの眼は────エデル自身を見てくれているように思えて、安心するのだ。

(何だ───僕が探していたのは…、自分の在り方なんかじゃなくて───ただ、僕を見て、僕の言葉に応えてくれる人だったんだ…)

 エデルは、それが────それこそが、生家で過ごしていた頃から、ずっと切望していたものなのだと────これまで放浪してまで求めていたものなのだと────ようやく自覚した。

 そうだ────だからこそ、リゼラが自分の言葉に応えてくれるだけに留まらず、自分の身を案じてくれることが、エデルは嬉しかったのだ。

 求めていた人が、自分の望み以上のものを与えてくれたことが────心が震えるほどに嬉しかったのだ。

「エデル…?」

 リゼラが、何も応えないエデルを、少し心配そうに見上げる。
 ただ
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