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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#15
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なかった…?」
ああ、エデルは自覚がなかったのか────自分が、魔獣からゾアブラを護ろうとしていたことに。
「リゼさんは────どうして、そう思ったんです…?」
困惑しているような口ぶりで、エデルが私に訊ねる。本当に自覚がないエデルに、私は苦笑しながら答える。
「私が貴方を助けたあのとき、エデルが自分で言ったんじゃないですか。ゾアブラはお世話になった人なのだ───と。恩を感じているのでしょう?」
エデルがそう言ったとき────私は【
心眼
(
インサイト・アイズ
)
】で確かめている。あの言葉に嘘はなかった。
私はまだ、誰かが嘘を吐いたところを【
心眼
(
インサイト・アイズ
)
】で視たことがないけれど───レド様曰く、悪意ある嘘を吐くと、その人を取り巻く具象化された性根が濁るのだそうだ。
まあ、エデルの場合、嘘───というか、その演技に悪意はなさそうだから、【
心眼
(
インサイト・アイズ
)
】では判らない可能性もある。
でも────あのときのゾアブラに対する言葉には、エデルの感情が籠っていたと────私には確信があった。
エデルの言葉には、大抵、感情が伴っていない。
だからこそ、私は、エデルは演技にしか興味がない────他人には興味がないのだと思い込んでしまっていたのだ。
だけど───時折、その言葉に感情が籠もることがある。
エルの代役のために劇団に身を寄せたとき、共演や演技指導でエデルと何度も言葉を交わしているうちに、そう気づいて────注意して聴くようにしていたら、いつの間にか聞き分けられるようになっていた。
ジェスレム皇子に接触した件だって、盗賊団のときのことが頭にあったから、単なる好奇心で動いたのだと決めつけて責めてしまったが────もしかしたら違ったのかもしれないと、今更ながらに思う。
「それに───ゾアブラの息子さんのことも、必要以上の付き合いはなかったと言っていたけれど、ジェスレム皇子に嫌悪を覚えるくらい親しみを感じていたようですし────貴方は…、ゾアブラを死なせたくなかったんだと思ったんです」
※※※
「違いましたか?」
エデルを真っ向から見て、そう問いかけるリゼラを────エデルは、信じられない思いで見返す。
リゼラの言う通りだった。
思い返してみれば───確かに、教会での自分の行動は───カデアに邸へ帰れと再三言われたにも関わらず、理由をつけて残ったのは───ただゾアブラを助けたかったのだとしか考えられない。
エデルは、そのことに────本当に自覚がなかった。
劇団に誘ってくれたザグレブに───息子の頼みを聞いただけとはいえ、快く劇団に迎えてくれたゾアブラに、エデルが恩を感じていたのも
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