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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#14
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しく知ったら───ラドアの正体に、おそらく気づくはずだ。

 そう考えると、ガルファルリエムとの約束を守るためには、ラギとヴィドを助けるべきではなかったとは思う。

 だが───ラギとヴィドを見捨てることなどできるはずもない。

 ガルファルリエムの怒りを買うことになるかもしれないが───どうせ、あと数年の命だ。

 会ったこともない聖竜による加護を()()()()から、数百年かけて緩やかに年老いて────そして、ついに“刻印”が消え、繋がりが途切れた。

 ラドアは、もう“聖女”などという存在ではなく────完全にただの“人間”なのだ。

 死ぬことは怖くない。むしろ────そのときを待っていた。

(これで────これで…、ようやく────)

 ディルカリダとサリルのいない、この世界から解放される────



 魔力量は人並みだったが───魔術式の構築においては、他の追随を許さなかった────美貌の才女ディルカリダ。

 記憶を持ったまま転生するために、魂魄に損傷を負ってまで────ラドアを救い出してくれた、大切な────本当に大切な親友だ。


 そして、妹のような────娘のような、可愛いサリル。

 彷徨っていたところを保護したと、ディルカリダが連れて来た彼女は───その身に持つ膨大な魔力のせいで最愛の母を亡くしたらしく、あまり感情を出すことはなかったが────その()()()()を梳いてあげたときだけは、はにかんだ笑みを見せてくれた。


 崩れ落ちた塔の残骸があるだけの荒れ果てたこの地で────三人で助け合いながら、細々と過ごした日々。

 ディルカリダによって埋もれた研究所からラドアが救い出されて、ほんの数年間────研究のために格納庫に持ち込まれ、奇跡的に残っていた原初エルフが建立したこの寺院で────バナドルが迷い込んでくるまで、ラドアはディルカリダとサリルと共に暮らした。

 あの愛しくて幸せな日々は────もう二度と戻ることはない。

 ラドアは、そっと目を瞑って────今もなお色褪せることのない遠い日々に────胸に宿る大切な二人に、思いを馳せた。

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