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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#12
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込む。【覚醒】によって高められた腕力で、レナスが【冥】を振り抜いた。

 枯れた“椿”がその花冠を落とすように、切り離された剣身があっけなく落ちて────耳障りな音を大きく立てながら、床に転がる。

 私はこの機を逃さず、【ツイノミツルギ】を短剣に替えた。手にしたそれを投擲すると、すかさず魔術を発動させる。

「【疾風刃(ゲイル・ブレイド)】!」

 魔獣は剣の柄を棄て───掌を前に突き出す。

 私が放った短剣が、【結界】を斬り裂いた。しかし、続いて向かった風刃は、新たな【結界】に弾かれる。魔獣が【結界】を破られることを予測して、内側にもう一つ【結界】を張ったのだ。

 間髪入れずに、レナスが黒刀でそれに斬りかかった。

 レナスに合わせ、私はもう一度魔術を放とうとしたが────発動するには、魔力が足りない。

「っく、こんなときに…!」

 固有魔力が尽きなければ、自動的には共有魔力に切り替わらない。

 魔獣は───私が作ってしまった隙を逃さず、目の前にいるレナスに向かって腕を振るう。

 【結界】を斬ったばかりで、刀を振り下ろした状態のレナスは───それをまともに食らい、吹き飛ばされた。

「レナス…!」

 レナスに一瞬気を取られたものの───魔獣の殺気を感じて意識を戻す。

「ノルン!共有魔力に切り替えて!」

───はい、(マスター)リゼラ!───

 ノルンの返信が響き、ほとんど空だった魔力が満たされる。だが───すでに魔獣は距離を詰め、眼前で私を潰すべく腕を振り被っていた。

「っ!」

「リゼラ様…っ!」

 レナスの叫び声が聞こえたが────私には、レナスが無事だったことに安堵する余裕もない。

 まずい────そんな言葉が過った、そのとき。魔獣が、振り下ろすはずだった拳を開いて突き出したかと思うと───後方から純白の矢が飛来して、魔獣の築いた【結界】を撃ち砕いた。

 それが誰の仕業かなど考えるまでもない。あれは────【フェイルノート】の矢だ。

 私は振り返らず、魔獣に向けて唱える。

「【重力(グラビティ・)操作(オペレーション)】!」

 魔術式が現れて魔獣を捕え────魔獣は、膝をついて(こうべ)を垂れた。

 私は、どうしてか、それが当然であるかのように───【夜天七星】ではなく、【誓約の剣】を呼び寄せる。

 そして───魔獣の首を目掛けて、その白き聖剣を───レド様よりいただいた大事な刀を振り抜いた。


※※※


 ペギルは、突如、痛みに襲われ───目を覚ました。

 その痛みがどこから来るのか辿れば───うつ伏せに倒れたペギルの背中に何かがのしかかっている。

 のしかかる何か
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