暁 〜小説投稿サイト〜
コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#11
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
───レナスと合流しなければ。

 見る限り、ケガはなさそうだけど────両手に持つ2本の短剣だけで戦っているレナスは、魔獣が繰り出す剣の切っ先を僅かに逸らすのが精一杯で、防戦一方となっている。

 一旦、レナスを魔獣と引き離して、仕切り直す。そう決め────私は、奔りながら魔術を発動させた。

「【疾風刃(ゲイル・ブレイド)】!」

 風となった光の奔流が、魔獣の首元目掛けて向かっていく。魔術は、魔獣に届く直前で────見えない壁に弾かれた。

 【聖剣】で防がれるか、後退すると考えていた私は、一瞬、虚を衝かれる。

 あれは────【結界】?

 視れば───魔獣の前面に、編み込まれた魔力が壁のように立ちはだかっている。間違いない。これは────エルフの固定魔法だ。

 まさか────この魔獣が張ったの?

 ジグを捕えている───記憶を強制的に甦らせる魔術の存在が頭を過る。

 魔獣の魔力量は人間などより遥かに多い。あの魔術を発動させることは可能なはずだ。位置的にも、あの魔術式を通過してきた可能性は高い。

 でも、それなら────この魔獣の前世はエルフだったということ…?

 そこまで考えて、私は思考を切り替える。

 つまり、この魔獣は───魔獣にしては高い知性だけでなく、エルフとしての経験、技能を持ち合わせているものと考えられる────今は、その情報さえあればいい。

 私は、短剣を2本取り寄せ───まず、1本を魔獣の顔面付近に向かって投げつけた。そして、一拍置いて、もう1本を投擲する。

 初めに放った霊剣である短剣が、【結界】を斬り裂く。【結界】は瞬く間に(ほど)け、無防備となった魔獣に2本目の短剣が襲う。

 短剣とはいえ霊剣を危険だと判断したのか────魔獣は【聖剣】でそれを弾いた。

 魔獣の気が逸れたその一瞬を見逃さず、レナスが後退する。

「【重力(グラビティ・)操作(オペレーション)】!」

 レナスが離れた瞬間を狙って、魔術を発動させる。

 魔獣が重力に囚われ膝をついたのも束の間────魔獣は、その膂力で以て重力に逆らい、足元の魔術式に【聖剣】を突き立てた。

「リゼラ様!」
「レナス、私の後ろに下がって!」

 自由になった魔獣が、その巨体で迫り来る。

「【防御壁(バリケード)】!」

 私は咄嗟に、【聖騎士(グローリアス・ナイト)】となって与えられた特殊能力で防壁を張った。魔獣は見えない壁に阻まれ、こちらには近づけない。

 突如現れた壁が気に障ったのか────魔獣は乱暴に【聖剣】を叩きつけるが、私の予想通り、魔術のようには砕けない。

 【聖剣】と共に与えられた特殊能力だ。【聖剣】をも防ぐのではないか
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ