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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#11
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足元に向かって流れていくのを感じ取った。

 魔力はそのまま足元の床に呑み込まれていき────私を起点に巨大な魔術式が瞬く間に広がって、レナスの許へと向かっていたジグを捕らえる。

 魔術式から発せられた強い光が私の中に入り込み、耳鳴りと頭痛に襲われたが───それは、すぐに止んだ。

 何が起こったのか解らないまま、顔を上げると───前方に膝をつき蹲るジグが見えた。

「ジグ…!」

 すぐさま【心眼(インサイト・アイズ)】を発動させると、ジグを捕えた魔術を視る。

 その結果に────私は息を呑んだ。


記憶想起(アナムネシス)
 強制的に前世の記憶を甦らせる魔術式。【潜在記憶(アニマ・レコード)】に眠る知識を活用するために創られたが、行使すると魂魄を損傷することが実験段階で判明し、【禁術】に指定されて実用化は断念された。後世、この魂魄の損傷が【忘却障害】を引き起こすという事実が、この魔術の被験者の魂魄保持者たちによる自己申告で明らかになった。


「強制的に前世の記憶を甦らせる…?」

 苦悶の表情を浮かべて、私の足元で倒れているレド様を見遣る。

 まさか───まさか…、レド様は───この魔術で、前世の記憶を───あの凄惨な末路を思い出してしまったというの…?

「そんな────嘘でしょう…?」

 “神託”は前世の生業を調べる魔術ではないか────自分でそう述べておきながら、こういった魔術が存在する可能性に、どうして思い至らなかったのか。

 前世の生業をただ調べるだけでは────活用しなければ、意味はないというのに。

 思い返せば、ヒントは十分あった。バナドル王が制定したという、【参拝義務】。そして────“デノンの騎士”の成り立ち。

 どちらも、参拝あるいは神託のために教会に国民を呼び寄せ───有能な者をそこで見極め、身分関係なく雇用して、かなりの短期間で国力あるいは武力を向上させている。

 ただ前世の生業を調べるだけでは、そんなこと成せるわけがない。

 それに────イルノラド公爵夫人レミラが、授かった“神託”が『一女』だったために、生家で冷遇されていたという事実。

 あの人の生家バララニ伯爵家は───確か、皇王デノンに才能を見出された平民が興した貴族家だったはずだ。

 始祖が、“神託”によって重用されたという事実があったからこそ────前世の知識や経験を思い出したことにより、まるで“神託”で告げられた才能を持っていたかのように思われていたからこそ────バララニ伯爵家は、あれほど“神託”に重きを置いていたのだろう。

 イルノラド公爵夫人の両親が、実の娘を虐げるくらい異常なほど、“神託”を信じ込んでいたことを────もっと疑問に思うべ
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