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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#10
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陥っていた。
だが───セレナは、この攻防の中で一つだけ気づいたことがあった。
それは、ザレムが繰り出す風の魔術が、あの魔獣を切り裂いた竜巻とは別物だということだ。
同じ風系統の魔術なので、調整して豪風や竜巻を使い分けているのかと思っていたが───ザレムに調整している様子は見られないし、こちらが魔術の規模を少し変えようと、ずっと豪風の規模は一律だ。
とすると───今行使している魔術陣では、一筋の豪風しか出せない可能性が高い。
(それなら────あの風以上の規模で攻撃すればいい)
セレナは、リゼラのように魔力を操作して、自分の裁量で魔力を注ぐことなどできない。そこで、リゼラに提案されたのが───時間を目安にして、魔力量を調節することだった。
つまり、短杖の持ち手部分に刻まれた魔力を吸い取る魔術式に、何秒指を当てるかで調節するのだ。
まだ検証を始めたばかりなので、何秒当てればどのくらいの魔力量になり、魔術の規模はどれくらいになるのか、正確には把握できていない。
だけど、さっきの魔物や魔獣との戦いで、魔術を撃ち続けたことにより、大雑把にではあるが掴めた。
セレナは短杖を握り締め───先程よりも長く魔術式に指を当てる。杖が淡く光を帯び始めた。
けれど───魔術の規模が大きくなれば、その分だけ発動にも時間がかかる。それを、ザレムが見逃すわけがなかった。
ザレムは、咄嗟に手にしたままのメダルで魔術を発動した。氷刃を蹴散らすためではなく───セレナを傷つけるために、豪風が放たれる。
まずい────とセレナが思ったときには遅かった。豪風に気を取られ、しっかりとイメージできなかったために魔術陣は霧散して、セレナの魔術は不発となる。
迫りくる豪風────これは、おそらく【
防衛
(
プロテクション
)
】では防ぎきれない。固く目を瞑って、痛みを覚悟したそのとき────今まで気配を消すように控えていたラムルが、セレナの前に躍り出た。
ラムルの手に大剣が現れる。ラムルはその剣を軽々と振り被ったかと思うと豪快に振るって、豪風を斬り払った。豪風の断片が宙に溶けるようにして、消える。
魔術を剣で斬るなど────少なくともセレナには前代未聞だった。
それに、鍛練のときラムルは主に暗器を操り、大剣を振るうところなど見たことがなかったこともあって────セレナは、しばし驚きに呆けた。
「何をしている、セレナ!早く次を放て!」
「は、はい!」
ラムルの一喝で我に返ったセレナは、慌てて短杖に魔力を流す。
しかし、ザレムの方が早く───コートの内ポケットから、新たなメダルを取り出して掲げた。魔術陣はザレムの魔力を吸い取り───セレナの魔術が完成する
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