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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#10
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はっ───何を言うかと思えば。領民や使用人のことなど、大事の前には些事でしかない。お前には解るまい。あれは───ゲレトは、いずれ我が伯爵家に栄光を齎す存在だった。それを────それを…、あのベイラリオの愚息めが…っ!」

 ザレムの双眸が怒りに染まる。愛する息子を殺されたザレムの怒りは、セレナにも、ある程度ならば理解はできる。

 だけど────

「バレスとデレドだって、お兄様と同じ貴方の息子ではないですか。魔力量だって───お兄様とそんなに変わらない。領民や使用人を切り捨て、無関係な人々を巻き込んでまで仇を取るよりも───バレスかデレドに伯爵家の将来を託すことだってできたはずです」

 魔力量に関しては、ルガレドやリゼラのように量れるわけではないが───魔術の発動回数を比べれば、おおよその見当はつく。

 それによって───兄や弟たちよりも発動できる回数が少なかったセレナは、“落ち零れ”だとされていたのだから。

「バレスとデレドが───ゲレトと同じだ、と…?バカを言うな。同じなわけがあるか。ゲレトは、彼のバナドル王の愛妃の───偉大なるエルダニア王国を造り上げた尊いお方の再来なのだぞ。バレスとデレドのような───凡愚と一緒にするな」

「……お兄様が、バナドル王の側妃ディルカリダの再来───ですか?
それは…、何を根拠に仰っているのですか?」

 セレナの声音が低くなったことを気にも留めず───ザレムは酔い痴れたように答える。

「ゲレトの────あの青い髪だ。彼のディルカリダ様と同じ────」

 エルダニア王国を大国に押し上げたという、バナドル王の側妃ディルカリダ────彼女とディルカリド伯爵家の関係については、判明したすべてをリゼラから聴いている。

 セレナの生家はディルカリドと名乗ってはいるが、ガルド=レーウェンに与したことで取り立てられたディルカリド家の分家筋だったということは、ディルカリド伯爵家に連なる者として教えられていた。

 つまり────セレナの家系は始祖の直系ではない。

 リゼラの推測通り【青髪の魔女】がディルカリドの始祖だとしても、それが伝わっていないことは十分ありえる。

 だから、ザレムが、歴史研究家ビオドの説を信じていても────別におかしくはない。

 けれど────ゲレトをディルカリダ側妃の再来だと信じるその理由が、才覚などではなく髪色だと答えるザレムは、ディルカリダ側妃を信奉しているというよりも────ただ、先代ベイラリオ侯爵の妄想に惑わされているだけのようにしか見えなかった。

 そもそも、セレナの髪色がそうであるように───ディルカリド伯爵家の血筋は青系統の髪色を持って生まれることが多いのだ。

 それに、ゲレトの髪色は青というよりも、黒に
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