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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#10
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魔術というのは───【
認識妨害
(
ジャミング
)
】のことだろうか?
「由緒ある“氷姫”を扱えなかったから、自分でも扱える魔術陣を強請ったのか?」
続けられたザレムの言葉に、セレナは合点がいった。
ザレムは、先程の氷刃を別の魔術だと勘違いしているのだ。
自分や息子───つまりセレナの兄が“氷姫”を発動したときは、氷塊の形状も違ったし、数ももっと少なかったから────
「先程の魔術のことを仰っているのなら───あれは、“氷姫”で出したものです。確かに別の魔術も与えられてはおりますが───魔物や魔獣に放ったものも、すべて“氷姫”によるものです」
「ふん、見え透いた嘘を。“氷姫”は才能ある者にしか扱えない、難しい魔術陣だ。落ち零れのお前が、私やゲレトよりも上手く扱えるはずがなかろう」
「………」
“氷姫”は、長い年月が経つうちに磨耗したのか───削れてしまっている箇所があって、そのために魔力の経路が途切れているところがあり、発動はするものの、魔力が旨く行き渡らずに魔術が本来の規模にならないのだ───と、リゼラは言っていた。
短杖に不具合が生じた場合に備えてリゼラと共に検証した結果、メダルの何処を持つかによって魔術の規模が変わることも判明している。
扱いが難しいと考えているということは───父も兄も、魔術の規模が一定ではないことに気づいてはいたが、それが持ち方で変わるとは思い至らなかったのだろう。
父は、相変わらず───自分と亡き兄ゲレトだけは、“別格”だと信じているらしい。
以前のセレナなら、先程の父の言葉を鵜呑みにしていた。
鵜呑みにして────父と兄という存在を過大評価して、きっと自分を卑下していた。
だけど、今のセレナには、ただ滑稽に響いただけだった。
(ああ…、この人は────“本物”を知らないんだわ。本当の“別格”というものを────)
だから、臆面もなく自分が選ばれた存在などと宣い───自分には他人を虐げる権利があるなどと思い込めるのだ。
本当に選ばれた人というのは────“別格”というのは、リゼラみたいな存在を言うのだ。
魔力量や才覚は勿論、人格面でも────いや、何もかもが、ザレムやゲレトなど、リゼラの足元にも及ばない。
「一つ、お聞きしたいのですが────お父様。貴方は何故、生きているのに戻って来なかったのですか?」
「そんなもの────決まっている。ゲレトの無念を晴らすためだ」
ザレムは、さも当たり前というように───セレナの問いに答える。
「…お兄様の無念───ですか。確かに、お兄様の死は理不尽なものでしたけれど…、それは───領民や使用人に対する責任を放棄してまですることなのですか?」
「
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