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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#9
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絶句して立ち尽くしている。

 皆が呆然と佇む中───ディルカリド伯爵の不可解な一連の行動の真意に気づいたのは、セレナだった。

 バレスとデレドの動きが、何処か苦しんでいるように見えて────セレナは、はっとした。

(もしかして…、二人とも魔力を吸い取られている…?)

 父が、弟たちを留めておく理由は一つしかない。二人の魔力を利用するためだ。

 それに────父が放ったであろう先程の魔術。

 魔獣の血に塗れた床を見て、セレナは思い出した。

 同僚となったラナと初めて一緒に休憩をとったとき、ラナは自分がどんな仕事を担っているのかセレナに教えてくれた。そして───今はリゼラに習って魔玄を作る訓練をしているのだということも。

 ラナは────彼女は、あのとき何て話していた?

 魔玄づくりは、()()()()()()()()()()()()()()()を操るのが肝だ────と、そう言っていなかったか?

(魔物や魔獣の血には、魔力が溶け込んでいる…。先程の魔術は、魔獣の死体を片付けるためだけではなく────魔獣の血を流させるためだったとしたら────)

 それでは────その魔力は何のために必要なのか。

 バレスとデレドの下には────あの魔獣たちの血に塗れた個所には、どんな魔術陣あるいは魔導機構が敷かれていた?

(魔物や魔獣────人間でさえも隷属させる魔術…!)

 そこまで思い当たったセレナは、未だ呆気にとられたままの仲間に向けて叫んだ。セレナとハルド以外、皆、魔術の範囲内にいる。

「皆、そこから離れて───早く…!!」

 仲間たちはセレナの声で我に返ったものの、その意味が理解できなかったらしく、ただ驚いたようにセレナの方に顔を向けただけだった。

 セレナが再び仲間たちに警告をしようとした瞬間────それは、発動した。バレスとデレドを起点として、瞬く間もなく────巨大な魔術陣が、光を迸らせながら床を席巻する。

 仲間たちは逃れようと動き出したが、すでに遅く────咄嗟に範囲外まで跳び退くことができたラムルを除き、魔術陣に囚われた。

 ディンド、ヴァルト、アーシャの三人は、魔術陣の光に侵され、力が抜けたように膝をつく。

「ああ…、そんな───ヴァルト…!」

 今まで何があっても傍にいて励ましてくれた、この世で一番大事な人が囚われたという事実に────セレナは目の前が真っ暗になった。

 自分の隣で、ハルドが烈しく動揺していることにも気づかない。



「二人とも────何をしている。呆けている暇はないぞ」

 セレナとハルドは、俯けていた
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