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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#9
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双剣は、いとも容易くオーガの身体を斬り裂く。

 アーシャは、すかさず床に倒れ込んだオーガの首を落とした。
 生命力が強い魔獣は身体を切り離してもすぐには死なずに反撃してくることもあるので、確実に息の根を止めておくのが肝要だ。

 アーシャより一瞬遅れたものの───ヴァルトも我に返り、ブラッディベアの脳天目掛けて両手剣を叩きつけた。


 ディンドたちが魔獣を屠って、再び視線を向けると────すでに竜巻は消えていた。

 魔獣の死体は、竜巻によって細かく切り刻まれ、そこかしこから血を垂れ流している。

 そして───男が二人、奥の方から歩いて来て、竜巻によって魔獣の死体が寄せられて空いた中央で、立ち止まった。

 一人は───肩を越す程度に伸ばした淡い茶髪を項で括っている、痩せた中年の男だ。眉間だけでなく、眼の下にも、はっきりとした皺が走っている。

 表情は無く───その冷めた眼差しは、冷淡というよりも、ただ他人を否定して見下しているように見えた。

 もう一人は───対照的に筋肉質で大柄の老年の男だった。

 白髪が大半を占める紅髪を短く刈り上げ、貼り付いたような険しい表情が気難しそうな印象だ。

 背中には両手剣を背負っていて、何処かヴァルトに似ている。

 この大柄な男が、ヴァルトの兄でありハルドの祖父ドルトで───痩せた男が、セレナの父ディルカリド伯爵だろう。

「…お父様」
「じいさん…」

 セレナとハルドのそれぞれの唇から、思わずといったように零れる。

 二人の声は小さかったためか────ディルカリド伯爵にもドルトにも反応はなかった。


 ドルトは、ディンドたちの視線など気にならないらしく───両腕それぞれに抱えていたものを、無造作に床へと放り投げた。

 それは────2つとも、冒険者たちが持つような粗末な布袋に見えたが、それにしては何だか妙だった。それに────小刻みに(うごめ)いている。

「バレス、と───デレド…?」

 セレナが唇を震わせて呟く。
 バレスとデレドとは────セレナの弟たちの名だ。

 よくよく見てみれば────確かに、それらには人間の頭らしきものがついている。

 布袋と勘違いしたのは、彼らが纏っているボロボロになった服のせいだけではない。バレスもデレドも────両の手足がないのだ。

 平らな断面から見て、服ごと斬り落とされたとしか思えなかった。
 しかも───傷口の状態から見るに、斬り落とされたのは最近ではなく、かなり時間が経っているようだ。

「まさか────逃がさないために、手足を斬り落としたのか…?」

 ディンドは、無意識に出た自分の言葉に───その意味に、ぞっとした。

 仲間たちも、
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