暁 〜小説投稿サイト〜
コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#7
[6/9]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
てに国章を刻んだ、雄々しき騎士である彼らは───その成り立ちで以て“デノンの騎士”と呼ばれている。
(ああ───これで…、もう平民街に魔獣が解き放たれることはない)
前回は3頭の魔獣が相手だったから苦戦したと聞いているが───今回、魔獣は1頭しかいない。魔獣討伐に慣れている彼らなら、きっと討ち取ってくれるだろう。
カデアは、安堵の溜息を
吐
(
つ
)
いた────
※※※
踏み固められた
畦道
(
あぜみち
)
を、まだ幼い少年と少女が手を繋いで歩いている。
少年は
レ
(
・
)
ナ
(
・
)
ス
(
・
)
の
(
・
)
おさがりの着物を着て、少女の方は、すぐ下の妹───つまり少女にとって姉のおさがりを着ている。
少女と少年は、後ろを歩くレナスに気づいて───“お勤め”から帰って来た長兄を見て、嬉しそうに笑みを零した。
畦道の両脇に広がっているのは────風にさざめく稲穂の海だ。初めて見るはずなのに────レナスは、その光景に、ふと郷愁を覚えた。
(ああ、そうだ───これが“米”だ。リゼラ様が時折ご馳走してくれる、あの“白飯”…)
萱
(
かや
)
で屋根を
葺
(
ふ
)
き、木で造られた───レーウェンエルダ皇国では見たことがない様式の小さな家々。飛び交う赤トンボ。
妹の帯に挿し込まれた、カラカラと乾いた音を立てて回る───赤い風車。
土間に設けられた台所で───忙しなく夕餉の支度をしている、白いほっかむりをした母。
(ああ…、これは───最後の情景だ。平和だった頃の───)
レナスは、この後、父母や弟妹たちが───いや、この村がどうなるか知っていた。
思い出したくなかった────でも、思い出してしまった。
黒
(
・
)
く
(
・
)
変
(
・
)
色
(
・
)
し
(
・
)
た
(
・
)
稲に絶望し────度重なる地震に恐れ慄き────土砂に圧し潰されて帰るべき家を失い────なすすべもなく、手足を投げ出して道端に倒れ伏す人々……
次々と過っていく、生まれ育った故郷の崩れ落ちた景色と───親しい人たちの変わり果てた姿────
(そうだ───そして…、“巫女”が───神を鎮めるために、あの“儀式”を行った…)
レナスは、“巫女”を───ひいては“神具”を守護する者の一人として、“儀式”に参加した。
“神の住まう場所”を再現して───夜闇に沈む時分、山の中腹に存在する“神域”で、ひっそりと行われた“儀式”。
“御神刀”を手に静かに舞う、レナスが護るべき───かつては美しかったであろう年老いた白髪の“巫女”。
(オレは────あの“儀式”で命を落とした────)
これらはかつて生きた自分の───“前世の記憶”だと思い至る。レナスは、いつの間にか閉じて
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ