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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#7
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 カデアは咄嗟に瞼を閉じたが、あまりの眩さに瞼を通しても光を感じ取れるほどだった。

 しばらくして────ようやく、光が収まったと感じられた頃、カデアは恐る恐る瞼を開けた。他の面々も眼を瞑っていたらしく、次々に開いていく。


「え────そんな…、穴がない…?」

 呆然と呟いたのは、ジェスレムに命じられ舞台に上がった男だった。それを聞き咎めたのはジェスレムではなく、男の主であるグラゼニ子爵だ。

「おい、どういうことだ?!」

「そ、それが────魔獣が落ちたはずの穴がないんです…!」
「そんなわけがないだろう!」
「ほ、本当です!ただ床があるだけで────穴なんてどこにも」

(そうか────修復されたんだわ…!)

 グラゼニ子爵たちの会話に、そう思い当たり────カデアは腕時計を見る。修復がなされても、おかしくない時間だ。

 これで地下との繋がりが塞がれ───新たな魔獣が、ここに現れることはなくなった。


 たけど────まだ問題が一つ残されている。

「ひ…っ」

 舞台の端に乗り、主と遣り取りしていた護衛の男が───恐怖で喉が引き攣ったような悲鳴を漏らす。

 奥の空間に留まっていた───もう1頭の魔獣が、修復によってできた確かな足場を踏み締め、身を乗り出したからだ。

 その魔獣の腕によって、再び悲鳴を上げる間もなく、男が吹き飛ばされたのは一瞬だった。

 魔獣は完全にこちら側に出てくると、グラゼニ子爵とジェスレム皇子の混成集団に向けて───両手を組んで振り被った。

 護衛たちは主たちを見捨てて逃げようとしたが、もう間に合うはずもない。

 魔獣の両手が振り下ろされる。幾つかの悲鳴に遅れて────何かが潰れる音が響き渡った。

 叩きつけられた魔獣の両手から僅かにずれたために、一緒にいたジェスレムが難を逃れたのは奇跡に近い。

 同じく無事だった護衛が、ジェスレムを置いて駆け出す。

 恐怖に顔を歪めたジェスレムは、何歩か後ずさってから、腰が抜けたのか────その場にへたり込んだ。

 組んだ両手を何度も振り下ろし、グラゼニ子爵家の一団に動く者がいなくなると────魔獣は、座り込み恐怖で歯を鳴らしているジェスレムに視線を向ける。

「ひ、ひいぃぃいぃ…っ」

 他人が魔獣に襲われることは愉しくても、さすがに自分が襲われるのは恐ろしいようで────ジェスレムが、情けなく半泣きになりながら、耳障りな悲鳴を漏らす。

 そのまま、ジェスレムも、グラゼニ子爵家と同じ末路を辿るかと思われたとき────金属が擦れるような、けたたましい音が響き、魔獣の気が逸れた。

 そして────全身に鎧を纏う騎士たちが、聖堂内へと現れた。

 胸当
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