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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#7
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何、呆けてんだ、カデア!逃げるぞ!」

 エデルに一喝され、カデアは我に返った。

 エデルは未だ気絶したままのゾアブラを肩に担ぐ。壁はまだ開ききっていない。今なら逃げられる。

 この閉じられた空間で魔獣と戦うのは無理だ。しかも、見た限りでは、魔獣は2頭いた。とにかく、急いでこの場から離れなくては────

「エデル、貴方は【往還】を使ってお邸へ帰りなさい」
「それは、最後の手段だ。とにかく、ここを出るぞ。先に行ってくれ。誰かと鉢合わせしても、オレでは対処できない」
「…そうね───わかったわ」

 ようやく冷静になれたカデアは、エデルの言葉に頷き───通路へと飛び込んだ。エデルがその後に続く。

 カデアは、走りながらランタンを取り寄せて灯す。

 壁の隙間に入り、次の通路に移って先を急いでいると───突然、強い衝撃に襲われた。足元が大きく揺れる。

 地震ではない。

 今、揺れたのは────壁が揺さぶられたからだ。

(魔獣が壁を叩いている…?!まさか───壊そうとしているの…?!)

「急ぎましょう、エデル!」
「ああ!」

 通路の端まで辿り着いたとき、背後の方で何かが崩れ落ちるような音がした。後ろは見ない。

 幸い、この壁は意外と頑丈で、魔獣で以てしても一撃では砕けないようだ。

 カデアとエデルは、壁が崩れる音に追い立てられて、段々大きくなっていく揺れに苦労しながらも────ひたすら走った。

 前方に光が見えた。通路の終わり───壁の途切れた個所から、光が差し込んでいる。

 あと少しで舞台に出られる────そう思った瞬間、隣の壁が砕け、壁の破片が降り注いだ。

「【防衛(プロテクション)】!」

 自分とエデルの頭上を覆うように魔術を施して、壁の破片をやり過ごすと───カデアとエデルは、光が差し込むその場所へと駆け込み、舞台上へと躍り出た。

 同時に───今通って来た通路を擁する壁が完全に崩れ落ち、露になった奥の空間から2頭の魔獣が、こちらを覗いているのが見えた。

 舞台上には、すでにジェスレム皇子はいない。いるのは、眼に痛い金色のコートを羽織った真っ赤な髪色の女性だけだ。

 女性は、舞台の客席側の端まで後退って────遠目でも判るほど、震えている。

(あれは────おそらく、ジェスレム皇子の親衛騎士であるイルノラド公女…)

 リゼラを長い間虐げてきた────イルノラド公爵家の長女だ。大事な主を虐げたことに思うところはあったが、カデアはすぐに関心を移した。

 一番の懸念は、アルゲイド侯爵だ。最悪───彼だけでも、逃がさなければならない。

 舞台下に視線を遣ると、出入り口に近い所を陣取っていただけあって、アルゲイド侯爵
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