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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第二十五章―過去との決別―#6
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レドは、はっとした。

 これだけの規模の魔術だ。行使に必要な魔力量もそれなりに多くなる。

 あの魔術は、おそらくエルドア魔石を精製する際に使われるものであることは間違いない。

 あの魔術を自分の魔力で発動したら、大量の魔力を消費してしまうことになる。そうなると、魔物に魔力を注ぐことなどできない。魔術の発動には、別の魔素を使うはずだ。

 それでは────魔素は何処から得る?

「まずい…!」
「ルガレド様?」
「魔獣の隷属が解ける…!」

 リゼラは、この施設の動力は地中の魔素を利用していると言っていた。

 今、この地下施設の【最新化(アップデート)】のために、予備炉まで作動させて【魔素炉(マナ・リアクター)】を最大限に稼働させている。当然、地中の魔素はかなり減少しているはずだ。

 この魔術あるいは魔導機構が、地中から魔素を集めているのか、この施設の動力を流用しているのかは判らないが────魔術を発動させ続けるほどの魔素が得られなくなってきているのだろう。

「魔術陣が消えた…!」

 アーシャが漏らした声に、ルガレドは思考を中断させて立ち止まる。

 見ると───魔術陣は完全に消え失せていた。

 隷属されていたと思しき魔獣や魔物、ハルドの肉親たちは、未だにぼんやりと座っている。魔術の効果はすぐには切れないらしい。

 それならば────間に合うかもしれない。

「魔獣たちは、まだ正気に返っていない!急ぐぞ!」

 ルガレドが告げると───我に返った仲間たちは、表情を引き締めた。そして、再び奔り出す。

「ルガレド様、階段は何処に…?!」

 かなり奥まで来たのに、階段が見えないことに焦れたのか────並走するディンドが叫んだ。

「あの突起があるところだ」

 壁にハンドルが取り付けられている箇所を指さす。そこまで、まだ少し距離がある。

「ルード!」

 そこへ、不意にネロが現れた。足を止めないルガレドに、ネロも奔り出し、傍を走りながら叫ぶ。

「皇子が教会に来たって!」
「ジェスレムが…?!」

(くそ、こんな時に────何てタイミングだ…!)

 魔物や魔獣、ハルドの父や兄を、横目で窺う。

 少しずつ、正気に返り始めている。いち早く正気に返った個体が、動き出すのが見えた。今、階段の方へ行かれたら間に合わない。

 ルガレドは腹を決めて────立ち止まる。そして、つられるように足を止めた仲間たちに告げた。

「【認識妨害(ジャミング)】を解除しろ!奴らをこちらに引き付ける!」

 ルガレドの言葉を受けた仲間たちが、次々に【認識妨害(ジャミング)】を解除する。突然現れた集団に、敵側から微かに驚く気配がした。

 
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