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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#5
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、この時間に、参拝に───教会に来ることを?)

 ジェスレムは、ゾブルらによって誘い出されたはずだ。

 もしかして────ジェスレム皇子は、グラゼニ子爵家を呼び出すように誘導された?

 だが────何のために?

(目撃者にするため……?)

 不意にそんな考えが浮かぶ。

 皇妃一派のよく使う手だ。誰か陥れるときは、必ず現場に縁者または傘下の者を忍ばせ、目撃者として有利な証言をさせる。

 だけど───それが正しいとして、ジェスレムはグラゼニ子爵に何を目撃させ、何を証言させるつもりなのか────まさか、自分が魔獣に襲われるところではあるまい。

 それ以上は何も考えが浮かばず、カデアの思考はそこで止まった。

 推測すらできないということは、おそらく根幹となる情報が欠けているということだ。今、この場で答えは出そうにない。

(とにかく、もう一つの集団が何処の貴族家か確認して────エデルを探すことが先決ね)


◇◇◇


 もう一つの集団が、反皇妃派の中堅ドレアド伯爵家だと確かめたカデアは───改めて、聖堂を見回す。ジェスレムが参拝する瞬間を狙って襲撃させるということは、ここで事を起こすつもりだろう。

 地下遺跡と繋がる階段が、この聖堂内もしくはすぐ近くにあるはずだ。

 リゼラならば、周囲を観察して何かとっかかりを見つけそうだが───カデアにはできそうもない。

 時間もないので、手っ取り早く、リゼラのオリジナル魔術【索敵】を発動させた。作製したばかりの【立体図(ステレオグラム)】を投影してみると、案の定、舞台の向こう側に空間がある。

 そこには、男性が一人いるらしい。リゼラの創った腕時計をしているところを見るに、その男性は十中八九エデルだ。

(さて────向こうに行くには、どうすればいいのかしらね?)

 【立体図(ステレオグラム)】をよく見てみると、舞台と向こうの空間を隔てる壁が、何重にもなっていることに気づいた。

 正面から見ると平面な壁にしか見えないが───右端が右側面の壁まで届いていない。右端に細い隙間がある。

 カデアは舞台に上り、壁の途切れているところまで歩み寄る。

 壁には繊細な模様がびっしり施されており、すぐ後ろの壁にも同じ模様が施されているため、途切れているようには見えないようだ。

 カデアは、迷わずその隙間へと入り込んだ。

 手前の壁と次の壁には少しだけ間隔が空いていて、通路のようになっている。ちょっとぽっちゃり体形のカデアには狭かったが、通れないこともない。カデアは壁の合間を進んで行った。

 すると、次の壁が先程とは反対側の端で途切れて、同じように隙間が空いていた。そして───その後ろには、また壁がある
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