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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#3
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者であることは判るはずだった。
しかし、偉そうに声をかけてきたその若い文官はそのことを知らないみたいで、不審者のごとく老齢の男を睨んでいる。
「…この書物を持ってくるよう、宰相殿に頼まれまして───お持ちするところです」
しゃがれた声で老齢の男が答えると、若い文官は訝し気な表情のまま、何故か自分が抱えていた書類を差し出してきた。
「それなら、ちょうどいい。これも宰相に持って行け。────ちゃんと渡せよ」
承諾していないのに、若い文官は本の上に書類を載せると、そう言い置いて行ってしまった。
あの文官は、老齢の男を正義感から訝しんでいたわけではないらしい。でなければ、大事な文書を預けたりしないはずだ。
(あれは────駄目だな)
男が皇立図書館の関係者であることも見て取れず、自分の仕事に対する責任感もない。
もっとも───この皇城において、ああいった輩は珍しくない。
(さてと───とにかく、シュロムの許へ向かうか)
老齢の男は増えた荷物を抱え直すと、また、のろのろと歩き出した。
手に余る荷物を何とか片手で抱え、施された装飾は簡素だが重厚な扉を空いた手でノックする。
「どうぞ」
忙しいのだろう、簡潔な応えが返される。
老齢の男は扉を開けてから、荷物を両手で抱え中に踏み込んだ。男の様子を見かねた宰相の側近ロヴァルが足早に歩み寄って来て、荷物を受け取ってくれた。
「おお、これはすまん」
「いえ。────この書類は…」
男が持ってくるような書類でないことに気づいたロヴァルが、眉を寄せた。
「ここへ来る途中、押し付けられての」
「……後で、しかるべき処分をしておきましょう。───どうぞ、こちらへ」
ロヴァルは険しい表情を消し、老齢の男を応接スペースへ誘導する。
老齢の男がソファに座ると、程なくして、宰相であるシュロム=アン・ロウェルダがやって来た。
「忙しいところにすまん。どうしても────詳しい話を聴きたくてな」
皇妃一派の所業のせいで無気力になった皇王が最低限の公務しかしないため、その分まで宰相であるシュロムの負担となっていることは周知の事実だ。
しかも、皇妃が、自分の公務はしないくせに政に口を出すことだけはしてくる上、第二皇子であるルガレドが公務に携わることを是としない。
この国は今、シュロムと第三皇子ゼアルムによって、何とか保っていた。
そんなシュロムに時間をとらせることは気が引けたが、それでも、どうしても────男は確認したかったのだ。
「いいえ。いらっしゃるだろうと思っていましたから」
シュロムはそう言って首を横に振ったが、苦笑いを浮かべている。
「そ
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