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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#2
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再び周囲を窺ってから【認識妨害(ジャミング)】を元に戻した。

 教会へ向かって、歩き出す。

 しばらく道を進むと、一軒の民家の庭に人がいるのが見えた。髪を引っ詰めたちょっとキツそうな印象の中年女性で───どうやら庭の手入れをしているらしい。

「あの、すいません」
「ん?何だい、アンタ」
「教会へ行く道って、これで合ってます?」

 ちょっと自信がなそうにエデルが訊くと、その女性は少しだけ警戒を緩めたようだった。

「合ってるよ。この道の突き当りだ。────墓参りかい?」

 この先にある教会に行く者は───貴族なら神託を受けるか参拝、平民なら墓参りと相場が決まっている。

「…ええ。何年かぶりに皇都に来たら、友人が亡くなっていたんですよ。それも───結構前に。それで、墓参りだけでもしてやろうと思いましてね」
「そうかい。…そりゃ、寂しいね」

「オレ、ここの教会は初めてなんですけど───他と違って、お貴族様も来るような教会って聞いてます。いきなり墓参りしたいって言って、入れてくれるんですかね?」
「ああ、そりゃ大丈夫だ。教会の中には入れてくれないけど、墓地には勝手に入れるよ」
「そうですか。それじゃ、行ってみます。ありがとうございました」

「あ、ちょいと待ちな。────ほら、これを持っておいき。お墓に供えてやりなよ」

 そう言って、女性は屈み込んで、黄色い花粉を抱くように咲く白い花を1本────根元に近い位置で茎を手折ると、エデルへと差し出した。

「こりゃ───親切にありがとうございます。きっと…、あいつも喜びます」

 感極まった演技をしながらも、エデルは────ザグレブなら、本当に喜ぶだろうと考えていた。


◇◇◇


 実は───エデルは、この教会へ来るのは初めてではない。

 19年前、ザグレブが亡くなったことが判明した後、一度だけ、当時の同僚と共にザグレブの墓参りをしたことがあるのだ。

 一度見聞きしたことは忘れることのないエデルは、教会の場所も作法も記憶している。

 だから、本当は───ラギとヴィドに案内してもらうまでもなかった。皇城を目指して進み、教会へと続く平民街にしては大きな道に入るだけで良かったのだから。

 だが、エデルはラムルに言われていた。リゼラの采配通りに動け───と。

 ラムル曰く────リゼラは運と縁を引き寄せる性質(たち)らしい。
 確かに、リゼラと共演した当時のことや盗賊団を壊滅したときのことを思い返してみると────思い当たる節があった。

 この時間───この瞬間に教会へ赴くことに、きっと何か意味があるはずだ。そう考えながら、道の突き当りに辿り着いたエデルは、教会を囲う黒い鉄柵の切れ目に設けられた大き
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