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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十四章―妄執の崩壊―#8
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───固そうな角が2本こめかみから生えていて、頭上に向かって大きく湾曲している。面長の顔の上寄りに白目のない濁った大きな眼が並び───噛み締められた大きな歯は軋み、ぎりぎりと微かな音を立てていた。

 それが、オーガと呼ばれる魔物が魔獣化したものだということを────ファミラは知らなかった。

「ぁ、ぁ…ぁ…」

 初めて相対するその存在に───その威圧感に、今度こそファミラの身体が震えた。歯の根が合わず、ガチガチと鳴った。その合間に、意味をなさない声が漏れる。

 よろよろと後退して魔術陣の上からは退いたものの、震えているせいなのか足に力が入らず、ファミラはそれ以上、逃げ出すことすらできない。

(そんな…、そんな───何で…、どうして…)

 とりとめもなく、そんな言葉が頭を過る。

 ジェスレムは、ルガレド皇子などとは違い、権力を持つ皇子だ。

 きっと、たくさんの護衛を侍らせているだろうから────ファミラは、自分が矢面に立って戦うことはないと思っていた。

 ただ、ジェスレム皇子の隣で笑っていればいいだけだ───と。

 だから───だからこそ、親衛騎士となることを引き受けたのに────


(そ、そうだ…、け、剣…!)

 ファミラに授けられた剣は、古代魔術帝国の魔剣だ。もしかしたら、どうにかなるかもしれない。そんな考えが浮かぶ。

 運のいいことに、魔剣は先程の揺れで、ファミラの手の届く場所に転がっている。

 魔獣たちから目を離さずに身を屈めて、何とか魔剣を拾うことができたのは、果たして幸いだったのか────

 ファミラは、震える手で魔剣の鞘を払った。

 男性でも振るうには腕力が必要となる幅広の両手剣だ。

 両腕で何とか自分の胸辺りまで持ち上げるが、成人してからまともに鍛練をしておらず、とっくに筋力が衰えているファミラにはかなり重く感じた。

 剣を構えてみたものの、期待していたような奇跡は起きず────ファミラは絶望を覚える。


 魔獣の1頭が、ついにこちらに踏み出した。舞台が魔獣の重みに耐え切れないらしく、魔獣の足元に亀裂が放射状に広がる。

「や、やだ…、こないで…!」

(だ、誰か…!ジェスレム様…!)

 助けを求めて、ぎこちない動きで、どうにか後ろに顔を向けると────ジェスレムは、笑っていた。

 先程の───眼が笑っていない、不安を掻き立てるような笑みではない。目元と口元を大きく緩めた、本当に楽しそうな笑みだ。

 これでは────これでは、まるで…、ジェスレムは、ファミラがこの化け物に殺されることを喜んでいるかのようだ。

 ジェスレムのその場違いな笑顔に、ファミラが恐怖を忘れて愕然とした、その次の瞬間────ファ
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