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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十四章―妄執の崩壊―#7
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は叫んだ。
そんな格好では────ジェスレム皇子の目には留まらない。
「今日は、最高に美しく着飾らなきゃならないんだから…!」
怒りで顔を醜く歪めて、そんなことを宣うファミラに───どこまでも自分の職務を理解していないファミラに、貴人の理不尽な我が儘はジェスレムで慣れているはずの侍従も、さすがに呆れ果てる。
ファミラがジェスレムに切り捨てられたことを知っている侍従は、秘かにファミラに対して同情を覚えていたのだが────これでは、切り捨てられても仕方がないのではないかと思ってしまった。ジェスレムと実にお似合いではある────とも。
「ファミラ公女───本日、赴くのは夜会ではありません。貴女様は、ジェスレム殿下の親衛騎士として───護衛として随従するのです。貴女様が想定する格好で行けば、周囲から失笑されるばかりか、足手まといになりかねない。ここに残っていただきます」
慌てたのは、ファミラだ。
それでは、ジェスレム皇子に会う機会が失われてしまう。
侍従の言いなりになるのは癪に障ったものの───悔しさを押し殺して承諾した。
「…っ解ったわよ。礼服で我慢するわ」
◇◇◇
(どうして、こうなるの…!)
一人、馬車に揺られながら、ファミラは唇を噛む。
馬車の中に、ジェスレムはいない。別の馬車に乗っているからだ。
あの後───化粧を施すことだけは、どうしても譲れなかったので、侍女に化粧をさせてから礼服に着替えた。
取り上げられていた魔剣を侍従から渡され、腰に提げることも背負うこともできなかったファミラは、魔剣を胸に抱えて持って行くしかなかった。
そして、皇城内の皇族専用のエントランスでジェスレムを待ってから、馬車に乗り込んだ。
当然、同じ馬車に乗せてもらえると思っていたファミラは、ジェスレムとは別の馬車に乗せられ────愕然とした。
ジェスレムがにこやかな表情でファミラの挨拶に応えてくれ、あのときのことは挽回できたのだと喜んだ矢先だったので、余計にショックを受けた。
何故、こんなことになってしまったのか────先程から、いやジェスレムの不興を買ったあの日から、その疑問ばかりがファミラの頭を廻る。
いずれ皇王となるジェスレム皇子の親衛騎士となって、皇王となったジェスレムの妃となって、共に栄光の道を歩み────周囲から崇められながら一生を終え────後世に名を遺す存在となるはずだった。
それなのに、何故こんなことに────
(そうだ────リゼラだ…!きっと、あの“出来損ない”の仕業よ…!)
ファミラは不意に閃いた。あの不肖の妹が、ファミラに関する悪辣な嘘を周囲にバラまいているに違いない。
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