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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十四章―妄執の崩壊―#7
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 “剣姫”とは────現在では、“剣聖”と並び、剣術を極めた女性が名乗ることを許される尊称だ。

 しかし、元々は────戦時や非常時に、騎士団もしくは軍団を率いる皇女の称号だった。

 特に、軍事国家たらんとする時代には、皇女であろうと参戦を免れることはできず────幾人もの“剣姫”が誕生することとなった。

 中には自身で剣や指揮をとり、実力で名を馳せた者もいたが────大抵は、指揮官が別にいて、単に象徴的存在として戦場に随従しただけである場合が多かった。

 だから、たとえファミラが正しく“剣姫”と称するに値する存在だったとしても、功績や名声を挙げることなく、レミラが語ったような────万人がひれ伏し、万人に傅かれるようなことはありえるはずもない。

 レミラとファミラ母子のこの勘違いは一部では有名な話であり、陰で失笑されていることを、レミラもファミラも気づいていなかった。

 この邸の侍従や侍女たちが、ファミラを丁重に扱っていたのは───ファミラが公女であることも一因ではあるが───ファミラが“剣姫”であるからではなく、単純にジェスレム皇子の親衛騎士だからだ。

 そのジェスレム皇子に見放された今、侍従も侍女も、ファミラへの対応が変わるのは当然の結果だったが───自分が万人に傅かれるべき存在だと思い込んでいるファミラには解るはずもなかった。


 日が完全に昇っても───貴族の子女が起床するような時間帯になっても、侍女は現れず、ファミラの苛々は募るばかりだった。

 扉の外で控えている護衛という名目の見張りや、廊下を行き来している侍女や侍従に聞こえるように───ファミラの怒りを思い知らせてやるために、思いきり音を立てて何か壊してやりたかったけれど、軟禁されてすぐ癇癪を起こして花瓶や水差しなど手当たり次第に壊してから、この部屋には壊れるようなものは置かれなくなってしまったので────それもできない。

(早くしないと───湯あみどころか、化粧する時間もなくなっちゃうじゃない…!)

 扉でも蹴ってやろうと思い立ったとき、その扉がようやく開いて───ジェスレム皇子の侍従が数人の侍女を引き連れ、部屋へと入って来た。

 その中に、昨日、最高級の香油とスキンクリームを持ってくるように命じておいた侍女を見つけ、ファミラは目を吊り上げて怒鳴る。

「あんた、一体何やってたのよっ!今日は早朝から風呂に入って、髪や肌の手入れをするって言っておいたでしょ!?」

 侍女は一瞬、怯んだ様子を見せたが、謝罪することもなく黙っている。再度、怒鳴ってやろうとしたとき────遮るように侍従が口を開いた。

「昨日、通達しました通り───本日、ジェスレム殿下が教会で参拝をなさる予定です。ファミラ公女にも随従して
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